2024.08.02

はぴテク相談室:フィンランドの幸福専門家、政府の焦点をGDPから幸福度へシフトすることを目指す

相談者

最近、仕事でもプライベートでも「もっと稼がなきゃ」「もっと成果を出さなきゃ」ってずっと焦ってるんです。でも、頑張っても頑張っても、なんか満たされない感じがあって……。これって私がダメなんでしょうか?

はぴテクさん
はぴテクさん

全然ダメじゃないですよ!むしろ、すごく大事なことに気づいてらっしゃると思います。実はそれ、個人の問題というより、社会の「ものさし」の問題かもしれないんです。フィンランドのアールト大学のフランク・マルテラ先生が2024年に発表した研究があって、まさにそこに関係する話なんですよ。

相談者

社会のものさしの問題、ですか?どういうことですか?

はぴテクさん
はぴテクさん

私たちの社会って、「どれだけ稼いだか」「どれだけ生産したか」というGDP的な考え方で「うまくいってるかどうか」を測りがちですよね。でもマルテラ先生は「経済は、天然資源と人間の労働力を幸福に変えるための道具に過ぎない」と言っています。つまり、お金や成果は目的じゃなくて、幸せになるための手段のひとつでしかない、ということなんです。

相談者

手段と目的が逆になってる、ってことですか?

はぴテクさん
はぴテクさん

まさにそうです!マルテラ先生は「尻尾が犬を振っている状態」と表現しています。本来は犬(=幸福)が尻尾(=経済・成果)を振るはずなのに、いつの間にか尻尾に振り回されてしまっている、という面白い言い方をしてるんです。あなたが「稼がなきゃ」と焦りながら満たされない感覚、まさにこれかもしれません。

相談者

なるほど……。じゃあ、本当の幸福って何なんでしょう?もっと漠然としたものになりそうで、逆に分かりにくくなりそうですが。

はぴテクさん
はぴテクさん

いい疑問ですね!マルテラ先生もそこを大事にしていて、「幸福を曖昧なままにしておかず、きちんと測れる要素に分解しよう」と言っています。その論文では、人間の幸福には4つの基本的な側面があると提唱しています。「持つこと(Having)」「愛すること(Loving)」「行うこと(Doing)」「あり方(Being)」の4つです。

相談者

4つ……少し難しそうですが、もう少し教えてもらえますか?

はぴテクさん
はぴテクさん

もちろんです!「持つこと(Having)」は、食事・水・住まいといった身体的な基本欲求が満たされているか。「愛すること(Loving)」は、人から受け入れられたり、思いやりのある人間関係があるか。「行うこと(Doing)」は、自分の意思で何かに取り組んでいる、主体性や自律性の感覚があるか。そして「あり方(Being)」は、自分の人生をちゃんと感じて、それを大切に思えているか、という感覚です。

相談者

うーん……「持つこと」は一応満たされてるかな。でも「愛すること」は……仕事に追われすぎて、人と深く関わる時間が減ってる気がします。「行うこと」も、やらされてる感が強くて、自分でやりたいことをやってる感じがしない……。

はぴテクさん
はぴテクさん

正直に振り返ってくれてありがとうございます。その感覚、すごく大切な気づきだと思います。マルテラ先生の理論では、この4つはどれかひとつだけ満たせばいいわけじゃなく、すべての側面に目を向けることが大事だとされています。「稼ぐ・成果を出す」は主に「持つこと」の領域に関係しますが、「愛すること」や「行うこと」「あり方」が満たされていないと、どこかモヤモヤが残りやすいのかもしれません。

相談者

確かに。お金や結果だけ追いかけてても、なんか足りない感じがするのはそのせいかも……。でも、これって個人でどうにかできることなんですかね?社会とか政府が変わらないと無理な気もして。

はぴテクさん
はぴテクさん

鋭いですね!マルテラ先生は実際に、この考えを政策レベルに広げようとしています。フィンランド議会の未来委員会などにも関わっていて、「政府が予算を削減しなければならない場面でも、幸福度の指標を使えば、人々の幸福を最も損なわない削減ができる」と主張しているんです。社会の仕組み自体を変えていこうという動きでもあるんですよ。

相談者

社会全体の話でもあるんですね。なんか少し、自分が満たされない感じも「自分のせいじゃない部分もあるんだ」って思えてきました。

はぴテクさん
はぴテクさん

それはすごく大事な視点の転換だと思います!もちろん個人としてできることもあって、この4つの側面を自分の日常で少し意識してみるだけでも、「今の自分は何が足りてて、何が足りてないか」が見えやすくなるかもしれません。「愛すること」や「行うこと」の部分、少しずつ日常で取り戻せそうなところはありそうですか?

相談者

そうですね……。久しぶりに友人とゆっくり話す時間を作るとか、仕事以外で自分が興味あることを少しやってみるとか、かな。小さいことですけど。

はぴテクさん
はぴテクさん

全然小さくないですよ!「愛すること」と「行うこと」、両方ですね。マルテラ先生の理論でいうと、まさにその部分に意識を向けていることになります。幸福の測定も、大きな社会の指標だけじゃなく、自分自身の4つの側面を時々チェックしてみる、という使い方もできそうですよね。今日話してくれたこと、そのまま大切にしてみてください😊

■ 今日のまとめ

  • 幸福は目的であり、経済的な成果(お金・生産性)はあくまでその手段のひとつ。手段に振り回されると満たされない感覚が生まれやすい。
  • マルテラ先生の研究では、人間の幸福には「持つこと(身体的欲求)」「愛すること(社会的欲求)」「行うこと(主体性・自律性)」「あり方(人生を感じ評価すること)」の4側面があるとされており、どれかひとつだけでなく全体に目を向けることが大切とされている。
  • この理論は個人の気づきにも使えるが、政策レベルでの活用(幸福度指標による政策判断など)も目指されており、社会全体の「ものさし」を変えていこうという動きでもある。

■ 出典・注意事項

  • 【論文】Frank Martela, 'Being as Having, Loving, and Doing: A Theory of Human Well-Being', Personality and Social Psychology Review, 2024/7/26. https://journals.sagepub.com/doi/10.1177/10888683241263634

  • 【記事】'Finnish happiness expert seeks to shift governments' focus from GDP to well-being', Aalto University News, 2024/7/29. https://www.aalto.fi/en/news/finnish-happiness-expert-seeks-to-shift-governments-focus-from-gdp-to-well-being

  • 【注意事項】この研究はマルテラ氏が提唱する幸福の理論的枠組みを示したものです。4つの側面が幸福を高めると示す因果関係を実証したものではなく、理論的・概念的な提案として発表されています。

  • 【注意事項】この幸福モデルはエリック・アラールトの社会学的幸福理論と自己決定理論を組み合わせたものであり、特定の文化・社会的背景(主に北欧・フィンランド)での議論を踏まえています。異なる文化圏や個人への適用には注意が必要です。

  • 【注意事項】「フィンランドが幸福度世界1位」の根拠となっているワールドハピネスレポートの指標(生活満足度)は、幸福の一側面であり、この論文で提唱されている4側面モデルとは測定方法が異なります。

投稿者によるコメント・補足(1件)
コメント 1

研究自体の紹介はこちら😊
フィンランドの幸福専門家、政府の焦点をGDPから幸福度へシフトすることを目指す
https://wellbeing-archive.pages.dev/posts/2024-08-02-1722643052/

はぴテクさんのウェルビーイング相談室 なんとかなる 主観的幸福・幸福測定研究方法論・指標お金・経済と幸福

← 検索にもどる