はぴテク相談室:ワークエンゲージメントと家庭
最近、仕事にはすごくやりがいを感じているんですけど、帰ったら妻から『最近、家のことに全然向き合ってくれない』って言われてしまって…。仕事と家庭のバランスって、どうやったらうまくとれるんでしょう?
それはつらいですね。実はそのモヤモヤ、研究でもちゃんと注目されているテーマなんですよ。「仕事へのエンゲージメント(やりがい・熱中度)が高まると、家庭にどんな影響が出るか」を調べた日本の研究があって、とても参考になると思います。少しお話ししてもいいですか?
ぜひ聞かせてください!仕事が充実していることと、家庭がうまくいかなくなることって、やっぱり関係しているんでしょうか?
実はそこが面白いところで、「仕事へのエンゲージメント」は一つの塊ではなく、3つの要素に分けて考えることができるんです。①活力(エネルギッシュに仕事できている感覚)、②熱意(仕事に誇りや情熱を感じること)、③没頭(仕事に深く集中・のめり込んでいること)、の3つです。この研究では、共働き家庭の方々を対象に、この3つが『家族と過ごす時間や関係の質が損なわれること(家庭時間の圧搾と呼んでいます)』にどう関わるかを調べました。
3つに分けるんですね。それぞれ家庭への影響が違うんですか?
そうなんです、ここが大事なポイントで。活力と熱意は、家族との時間が減るという現象を『抑える』方向に関係していました。つまり、仕事でエネルギーや情熱を感じている人ほど、家族との時間も確保できていた、という結果です。一方で、没頭だけは逆で、仕事にのめり込みすぎると家族との時間が減る方向に関係していたんです。
えっ、意外です!仕事が好きで熱意があるほど家族との時間も増えるなんて。でも没頭はマイナスになるんですね…。私、最近まさに仕事に没頭しすぎている気がします。
その気づきはとても大事だと思います。「熱意を持って仕事する」と「仕事に完全にのめり込んで他が見えなくなる」は、感覚的には似ているようで、家庭への影響という点では違う方向に出ているんですね。ちなみに、この結果は男性・女性どちらも同じ傾向が見られたそうです。
なるほど…。じゃあ没頭を減らして、熱意や活力を大切にすればいいということでしょうか?でも正直、没頭しないと成果も出にくくて。
おっしゃる通りで、単純に「没頭をやめましょう」とも言えないんですよね。そこで研究がもう一つ重要な発見をしていて、『家族関係の質』が大きな緩衝材になっていたんです。具体的には、『家族に何でも相談できる』『家族に自分のことを理解してもらっている』と感じている人は、没頭による家族時間の減少がやわらいでいた、という結果が出ていました。
つまり、仕事にのめり込んでいても、家族との関係がしっかりしていれば影響が小さくなるということですか?
この研究の範囲では、そういった関連が見られた、ということですね。また、家族関係の質が高い人は、活力や熱意が家族時間を守る効果もさらに強まっていました。関係の質が高いほど、ポジティブな効果が増幅されていたんです。
じゃあ、まず妻ともっとちゃんと話して、お互いのことを理解し合う関係を作ることが大事ということですね。なんだか、仕事より家族との対話を先に整えるべきだったかもと反省しています。
その視点、すごく大切だと思います。研究では「何でも相談できる」「理解してもらっている」という感覚が鍵になっていました。今日、奥さまに仕事のことや自分の気持ちを少し話してみるだけでも、その第一歩になるかもしれません。仕事のやりがいと家族との関係は、対立するものではなく、うまく組み合わせることで両方を支え合えることが、この研究から示唆されています。
ありがとうございます!仕事への関わり方を3つに分けて考える視点も新鮮でしたし、家族との関係の質を大切にすることが、結果的に自分自身のバランスにもつながるんですね。今夜、ゆっくり話す時間をとってみます。
■ 今日のまとめ
- 仕事への「活力」「熱意」は家族との時間が減ることを抑える方向に関係していたが、「没頭」は家族との時間が減ることに関係していた(共働き家庭を対象とした研究より)。
- この傾向は男女ともに同様に見られた。
- 「家族に相談できる」「理解してもらっている」という家族関係の質が高いと、没頭による家族時間の減少がやわらぎ、活力・熱意のプラスの効果はさらに強まる関連が示された。
■ 出典・注意事項
- 【出典】増田真也・他「ワーク・エンゲイジメントのネガティブな効果―共働き従業員の家庭時間の圧搾に与える効果と調整要因―」『組織科学』54巻3号, 2021年 https://www.jstage.jst.go.jp/article/soshikikagaku/54/3/54_20210521-3/_pdf/-char/ja
- 【注意事項①】本研究は横断調査(ある時点のデータ)に基づく相関分析です。「没頭が原因で家族時間が減る」という因果関係が証明されたわけではありません。
- 【注意事項②】対象は共働き家庭の従業員に限定されており、結果がすべての家庭・職場環境に当てはまるとは限りません。
- 【注意事項③】残業時間を統計的に統制した上での分析結果ですが、他の要因(職種・子どもの有無など)の影響も考えられます。
研究自体の紹介はこちら😊
ワークエンゲージメントと家庭
https://wellbeing-archive.pages.dev/posts/2024-04-21-1713738606/