はぴテク相談室:キャントリルのラダーの問題点
最近、ニュースでよく『世界幸福度ランキング』って見るんですけど、あれって本当に信頼できるんですかね?なんか日本はいつも低くて、見るたびにちょっとモヤモヤするんです。
そのモヤモヤ、すごくよくわかります!あのランキング、実は測り方自体に興味深い問題点が指摘されているんですよ。ランキングの多くは『キャントリルのラダー』という質問を使っているんですが、聞いたことありますか?
キャントリルのラダー?初めて聞きました。どんな質問なんですか?
こんな質問です。「考え得る最良の人生を10点、最悪の人生を0点とすると、あなたの今の人生は何点ですか?」というものです。毎年140カ国以上でギャラップという調査機関が聞いて、『ワールドハピネスレポート』としてまとめられているんです。シンプルな質問ですよね。
たった1問で幸福度を測っているんですか!確かにシンプルですね。でも何が問題なんでしょう?
2024年に発表されたイギリスでの研究で面白いことがわかったんです。この質問に答えるとき、人々が頭の中で何を思い浮かべているかを言葉で書いてもらって分析したら、『お金』や『権力・地位』に関する言葉が多く出てきたんです。つまりこの質問、知らず知らずのうちに『豊かさや社会的成功』という視点で人生を採点させてしまっている可能性があるんですね。
えっ、それってつまり、幸せを測っているつもりが、実はお金や地位を測っていた…ということ?
そう表現するとちょっと言い過ぎになっちゃうんですが(笑)、少なくともこの研究では『最良・最悪の人生』という言葉の組み合わせが、人間関係とか心の平和とかよりも、富や権力を連想させやすい、という関連が見られた、ということです。因果関係まではわかりませんが、質問の言葉の選び方が回答に影響している可能性は十分あります。
なるほど。じゃあ質問の仕方を変えたらどうなるんでしょう?
まさにその実験もされているんです!「最良・最悪」の代わりに「最も調和(ハーモニー)のとれた人生」という言葉を使うと、人々が思い浮かべる言葉がガラッと変わって、人間関係、バランスのとれた生活、愛や平和といった言葉が増えたんです。さらに面白いことに、スコアの平均が8.4点から8.9点に上がったんですよ。
同じ人の幸福度を聞いているのに、言葉を変えるだけでスコアが変わっちゃうんですね。それって逆に言うと、今の日本の低スコアも、質問の言葉の影響を受けているってこと…?
その可能性は考えられますね。ただし、この研究はイギリスの成人約1500人を対象にしたもので、日本での結果がどうかは直接はわかりません。また、北欧諸国はこのキャントリルのラダーで高スコアを出しているので、「富や権力を連想させるから高スコアになる」とも単純には言えないんです。文化や国によって解釈の仕方も違うかもしれませんね。
確かに。じゃあワールドハピネスレポートのランキングは、完全に無視すればいいんでしょうか?
無視するというより、「参考のひとつ」として見るのがいいと思います。たとえば国同士の大まかな傾向を比べるには使えますし、長年のデータが積み重なっているという強みもあります。ただ、自分自身の幸せを考えるときに『自分は何点だろう』って一喜一憂するのは、あまり意味がないかもしれません。お金や地位以外にも、人間関係や日々のバランス、心の平和など、幸せを構成する要素はたくさんありますから。
そう言ってもらえると、ちょっとラクになりました。点数が低くても、それだけで自分が不幸というわけじゃないんですね。
そうです!むしろこの研究が教えてくれるのは、『どんな言葉で幸せを問うか』によって、人は違う側面に目を向けるということです。日々の生活の中で、お金や地位じゃなく、大切な人との関係とか、心のバランスとか、そういった視点から自分の暮らしを見てみると、また違う景色が見えてくるかもしれませんよ。
■ 今日のまとめ
- ワールドハピネスレポートに使われる『キャントリルのラダー』は、質問の言葉の組み合わせが、人間関係や心の平和より『お金・権力・地位』を連想させやすい傾向がイギリスでの研究で示された。
- 質問のフレーミングを『調和のとれた人生』に変えると、人々が思い浮かべる概念が変わり、平均スコアも変化した。質問の言葉が回答に影響している可能性がある。
- ランキングの順位や点数は、測り方の特性を踏まえて『参考のひとつ』として見るのが適切。自分の幸せを考えるときは、お金や地位以外の要素にも目を向けてみよう。
■ 出典・注意事項
- Krekel, C., et al. (2024). The Cantril Ladder elicits thoughts about power and wealth. Scientific Reports, 2024/2/1. https://www.nature.com/articles/s41598-024-52939-y
- 【注意事項】本研究はイギリスの成人1581人を対象としたものであり、日本を含む他国への直接の適用には限界がある。
- 【注意事項】研究で示されているのは質問フレーミングと回答内容・スコアの『関連』であり、フレーミングがスコアを因果的に決定するとは言い切れない。
- 【注意事項】北欧諸国がキャントリルのラダーで高スコアを示す事実など、本研究の知見だけでは説明できない点もあり、ランキング全体の解釈には複合的な視点が必要。
研究自体の紹介はこちら😊
キャントリルのラダーの問題点
https://wellbeing-archive.pages.dev/posts/2024-03-02-1709341783/