2023.12.26

はぴテク相談室:自然とウェルビーイング

相談者

最近、なんとなくストレスが多くて、もっと自然の中に行きたいなって思うんですけど、実際に自然って幸福感に関係あるんでしょうか?なんとなくそう感じるだけで、気のせいかなって思って…

はぴテクさん
はぴテクさん

気のせいじゃないと思いますよ!実は、滋賀県立大学の高橋教授たちが「森林幸福度」という考え方を提唱して、自然との関わりと幸福感の関係を調べた研究があるんです。「自然が好き」「気持ちいい」というふんわりした話を、ちゃんとデータで分析しようとしている面白い研究です。

相談者

「森林幸福度」って初めて聞きました!どういう意味ですか?

はぴテクさん
はぴテクさん

森林や山との関わりについて「どのくらい満足しているか」「やりがいや充実感を感じているか」「どんな感情を体験してきたか」を数字で測ったものです。感情も「前向き・楽しい・幸せ・誇らしい・畏敬(自然の大きさに圧倒される感覚)」といったプラスのものと、「悲しい・恐れ・怒り・恥ずかしい」といったマイナスのものを両方含めて測っているんです。

相談者

へえ、プラスだけじゃなくてマイナスの感情も含めて測るんですね。どんなことが森林幸福度と関係していたんですか?

はぴテクさん
はぴテクさん

2018年に滋賀県の野洲川上流域の一般世帯に行ったアンケートで分かったことなんですが、農業や林業に携わっている人は「充実感」と正の相関があったり、ボランティアで森林管理に参加している人は「満足度や充実感」と正の相関がありました。ただ「相関」なので、関わりがあるというだけで、どちらがどちらの原因かは断言できないことは覚えておいてくださいね。

相談者

なるほど。じゃあ、森を持っている人はもっと幸福感が高いのかな、と思ったんですけど、どうなんでしょう?

はぴテクさん
はぴテクさん

実は逆で、森林を所有している人は幸福度が全体的に低い傾向が見られたんです。研究者たちはその理由として、今の日本では森林の資産価値が下がっていて、管理する負担だけが増えているからではないかと推測しています。ただ、別の研究では、所有者でも「木工をする」「森でのんびりする」といった活動をしている人は幸福度と正の相関があることも分かっています。

相談者

森を持っていても、楽しみ方次第で変わってくるんですね。ちなみに私は森の近くに住んでいるわけじゃないんですが、そういう場合はどうなんでしょう?

はぴテクさん
はぴテクさん

面白いことに、住んでいる地域の森林の割合(森がどれだけ多いか)と幸福度の相関は、この研究では特定できなかったんです。つまり、近くに森があれば自動的に幸福になるわけではなく、実際に関わりを持つことが大事そうだということが示唆されています。

相談者

じゃあ、森だけじゃなくて川や湖でも同じようなことが言えるんでしょうか?

はぴテクさん
はぴテクさん

そうなんです!高橋教授たちはその後、森林だけでなく河川・湖沼にも「自然関連幸福度」の考え方を広げた研究もしています。その研究では、自然との余暇活動(釣りや散歩など)や生き物との触れ合いが、自然関連幸福度と正の相関があることが分かりました。

相談者

川や湖でも調べているんですね。何か意外な発見はありましたか?

はぴテクさん
はぴテクさん

ひとつ驚く結果があって、地区内の川の数が多いほど、川への幸福度が低い傾向があったんです。研究者たちは、川が多いことで洪水のリスクや管理の大変さなど、何らかのマイナス要素があるのではと推測しています。また湖については、リラクゼーション効果が、象徴性や食文化などよりも幸福感との相関が強かったというのも興味深いですよね。

相談者

自然といっても、関わり方や種類によってぜんぜん違うんですね。私も週末に川沿いを散歩したりするのが好きなんですが、それって意味があることなんでしょうか?

はぴテクさん
はぴテクさん

この研究の結果を見る限り、余暇活動として自然に触れることが自然関連幸福度と正の相関があることは示されています。ただ、研究は特定の地域(滋賀県)のアンケートが中心なので、すべての人に当てはまるかは分かりません。でも、あなたが「川沿いの散歩が好き」と感じているなら、それ自体が大切なことだと思いますよ。数字だけが答えじゃないですから。

相談者

そうですよね。なんか、自然との関わり方をもっと意識してみようと思えてきました。ありがとうございます!

はぴテクさん
はぴテクさん

ぜひ!「ただ近くにある」より「意識して関わる」ことが大事そうというのが、この研究から見えてくるポイントです。木工でも散歩でもボランティアでも、自分に合ったスタイルで自然と関わってみてくださいね。

■ 今日のまとめ

  • 森林や川・湖など自然との「関わり方」(農林業・ボランティア・余暇活動など)が、自然関連幸福度と正の相関を示す傾向があった。ただし相関であり、因果関係ではない。
  • 近くに自然があるだけでは幸福度との相関は確認されず、実際に関わりを持つことが重要と示唆されている。
  • 森林所有者は幸福度が低い傾向があったが、木工やのんびりするなど楽しみ方のある所有者は幸福度との正の相関も見られ、関わり方の質が影響している可能性がある。

■ 出典・注意事項

  • 高橋ほか「森林に関わる主観的幸福度に影響を及ぼす要因の実証的検討―滋賀県野洲川上流域を対象として―」日本森林学会誌 103(2), 2021. https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjfs/103/2/103_122/_article/-char/ja

  • 高橋ほか「森林所有者の森林幸福度にかかわる要因の検討―滋賀県野洲川上流域のアンケート調査結果の統計解析から―」日本森林学会誌 104(1), 2022. https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjfs/104/1/104_39/_article/-char/ja

  • Takahashi et al. "Nature and Happiness Levels: New SWB Domains for Rivers, a Lake, and Forests" IntechOpen, 2022. https://www.intechopen.com/online-first/85857

  • 【注意事項】いずれの研究も滋賀県野洲川流域を主な対象とした地域限定のアンケート調査であり、結果がすべての地域・人々に一般化できるかは不明。

  • 【注意事項】報告されているのはあくまで統計的な「相関」であり、自然との関わりが幸福度を高める(または下げる)という因果関係が証明されたものではない。

投稿者によるコメント・補足(1件)
コメント 1

研究自体の紹介はこちら😊
自然とウェルビーイング
https://wellbeing-archive.pages.dev/posts/2023-12-26-1703628006/

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