はぴテク相談室:睡眠不足は、利他的な行動を減らす〜睡眠の量も質も効いてくる〜
最近、職場の同僚や家族に対して「まあいいか」と思うことが増えてきて、自分が冷たくなった気がするんです。昔はもっと人のために動けてたのに…なんでこんなに変わったんでしょう。
それは気になりますよね。少し聞かせてください。最近、睡眠の具合はどうですか?寝る時間が減ったとか、夜中に目が覚めるとか、そういうことはありますか?
言われてみれば、仕事が忙しくて1〜2時間くらい睡眠時間が削られてる感じです。あと、寝ても疲れが取れないっていうか、眠りが浅い気もします。
実はそれ、かなり関係しているかもしれないんです。2022年にPLOS BIOLOGYという科学誌に発表された研究があって、睡眠不足になると「他者を助けたい」という気持ちが有意に下がることが示されているんです。
えっ、睡眠と人助けの気持ちってそんなに関係あるんですか?
そうなんです。この研究は3つの視点から調べていて、まず個人レベルでは、同じ人でも睡眠不足の夜の後は、十分に眠れた後と比べて、見知らぬ人にも親しい人にも「助けたい」という気持ちが下がることが分かっています。自分が冷たくなったんじゃなくて、脳がそういう状態になっている、ということですね。
それは少し救われる気持ちです…。でも、寝る時間だけじゃなくて「眠りの質」も関係するって感じがするんですけど、どうなんでしょう?
鋭いですね!研究でもまったく同じことが示されています。睡眠の「効率」、つまりベッドにいる時間のうちどれだけちゃんと眠れているかが下がると、翌日に他者を助けようとする行動が減る、という関連が見られました。そして面白いことに逆もそうで、よく眠れた翌日は助けようとする気持ちが上がっていた、という結果なんです。
個人だけじゃなくて、もっと大きなスケールでも影響するんですか?
はい、社会全体レベルのデータもあります。アメリカのサマータイム制度で時計が1時間進められる日、つまり実質1時間睡眠が削られる週に、慈善団体への寄付額が約10%減少していたというんです。サマータイムのない州では同じ時期にそうした変化は見られなかった。個人の気持ちが、社会全体の「助け合い」にまで波及していたわけですね。
10%減少って、すごいインパクトですね。脳の中では何が起きているんでしょう?
この研究ではfMRI、つまり脳の活動を画像で見る装置も使っていて、睡眠不足のときは「向社会性を促す社会的認知の脳のネットワーク」と呼ばれる部分の働きが落ちていることが分かりました。つまり、他者への共感や思いやりを生み出す脳の仕組みが、睡眠不足によって活動しにくくなっている状態と関連していたんです。
じゃあ、しっかり寝ることで、また人のために動ける自分に戻れる可能性があるということですか?
この研究は「睡眠と利他的行動の関連」を示したものなので、「寝れば必ず戻る」と断言はできません。でも、睡眠の量が増えたり質が上がった翌日には助けようとする行動も上がっていた、という関連は示されています。まずは睡眠の時間を確保することと、眠りの深さにも目を向けてみることが、一つの手がかりになるかもしれませんね。
自分が冷たくなったんじゃなくて、睡眠不足が影響していた可能性があるとわかって、少しほっとしました。寝ることをもっと大事にしてみます。
それは素晴らしい気づきです。「しっかり寝ることは、自分のためだけじゃなく、周りの人との関係にも関わっている」——この研究はそう示唆しています。睡眠を後回しにしがちな毎日ですが、寝ることを「自己投資」として大切にしてみてください。
■ 今日のまとめ
- 睡眠不足(時間・質どちらの低下も)は、他者を助けたいという気持ちや行動の低下と関連することが、個人・集団・社会規模の3つのレベルの研究で示されています。
- 同じ人でも、よく眠れた翌日は利他的行動が増え、眠れなかった翌日は減るという日々の変動が確認されており、「自分が冷たくなった」というより睡眠状態が影響している可能性があります。
- サマータイムによる1時間の睡眠損失で社会全体の寄付が約10%減少するなど、睡眠は個人の気持ちにとどまらず、社会の「助け合い」全体にも関わる要因として注目されています。
■ 出典・注意事項
- 出典:Simon et al., 'Sleep loss leads to the withdrawal of human helping across individuals, groups, and large-scale societies,' PLOS BIOLOGY, 2022年8月23日. https://journals.plos.org/plosbiology/article?id=10.1371/journal.pbio.3001733
- 注意事項①:本研究は相関・関連を示したものであり、「睡眠不足が利他的行動を減らす」という因果関係を完全に証明したものではありません。
- 注意事項②:サマータイムのデータは自然実験(集団レベルの観察)であり、個人への直接的な適用には限界があります。
- 注意事項③:fMRIを用いた脳活動の知見も、あくまで「関連」の観察であり、メカニズムの解明には今後のさらなる研究が必要です。
研究自体の紹介はこちら😊
睡眠不足は、利他的な行動を減らす〜睡眠の量も質も効いてくる〜
https://wellbeing-archive.pages.dev/posts/2023-11-28-1701176406/