世界には3種類の国がある:幸せな集団主義国、少し幸せな個人主義国、そして日本であ
世界の幸福度調査GFS(Global Flourishing Study)の最新研究。
世界22カ国での幸福度調査の結果を元に、
国別にグループ分けしてみたよ。(クラスター分析)
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すると、3つのグループに分かれました。
これが、衝撃的な結果でして、、、
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第一グループが、幸せな国!
アルゼンチン、ブラジル、インドネシア、メキシコ、イスラエル、米国などで、
全体的に幸福度がバランス良く高い。
基本は経済的には低水準だが(イスラエル、米国除く)、
感謝、希望、関係性が強く、集団主義的・関係性重視の国。
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第二グループが、少し幸せな国。
オーストラリア、ドイツ、インド、英国、スウェーデン、香港、タンザニアなどで、高所得国が多い。(タンザニア除く)
個人主義的、自律性重視の国が多い。
GDPだけではウェルビーイングは頭打ち、ということが分かるグループです。
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そして、第三グループが、日本。
全体的にスコアがめっちゃ低い。。。。
特異的で謎の結果を出している国。
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今回の結果を見るに、
集団主義的な国だったのに、個人主義的に変わってきたという特異な点も影響しているのかなぁ。
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国家繁栄のパターン:22か国における幸福と心理社会的資源の多次元的クラスター
Patterns of National Flourishing: Multidimensional Clusters of Well-Being and Psychosocial Resources Across 22 Countries
Applied Research in Quality of Life,2026/5/19
Taylor G. Hill(ダンディー大学、イギリス)
https://link.springer.com/article/10.1007/s11482-026-10610-w
国民の幸福度は複数の心理的側面を反映しているが、国際比較研究では単一の指標や経済的代理指標に頼ることが多い。22か国を対象としたグローバル・フローリッシング・サーベイの2つの波(第1波 N = 202,898、分析サンプルN = 182,354)を用いて、幸福度と心理社会的資源の9つの指標(幸福感、生活満足度、人生の意義、自律性、能力、関係性、感謝、希望、生活バランス)に基づいて国レベルのプロファイルを特定した。階層的クラスタリングとk平均クラスタリングにより、両波で3つのプロファイル解が支持された。プロファイルは幸福度と心理社会的資源の両方で意味のある違いを示し、GDPや地理的グループ分けでは捉えられないパターンが明らかになった。中所得国のいくつか(アルゼンチン、フィリピン、インドネシアなど)は幸福度と資源レベルが高かったのに対し、高所得国のいくつか(ドイツ、香港など)は中程度のプロファイルを示した。約86%の国は調査期間を通じて同じ傾向を維持しており、少数の国がクラスターを移動させているが、これは潜在的な状況変化を反映している。これらの結果は、国家の繁栄が経済的、文化的、心理社会的要因の相互作用を反映していることを示唆しており、グローバルな幸福に対する多次元的アプローチの価値を強調している。
【背景】
■ ① 出発点:「豊かさ=幸福」とは限らない
研究全体の問いは「なぜ、ある社会は他の社会より繁栄(flourish)するのか?」です。
・経済発展が国民の幸福を左右する重要な要因であることは確かに示されてきました(Diener et al., 2018;Helliwell et al., 2020)。
・しかし、同じくらいのGDP水準でも幸福度に差が出る例があります。たとえばコスタリカは、他の中所得国に比べて一貫して幸福度が高いことで知られています。
・こうした「ずれ」は、心理的・文化的・社会的な資源が幸福のあり方を左右していることを示唆します(Oishi & Kesebir, 2015;Jansen et al., 2024)。
▼ ここから導かれる前提
国の繁栄は「物質的な豊かさ」だけには還元できず、経済・文化・制度・心理社会的要因が組み合わさって決まる、という見方です。
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■ ② 幸福の「測り方」が抱える問題
次に著者は、これまでの国際比較が使ってきた測定方法の限界を指摘します。
▼ 単一指標への依存
・多くの国際調査は「人生全体の評価」を1問だけで尋ねる方式に頼ってきました。代表例がギャラップ世界調査の「キャントリルの梯子(Cantril Ladder)」です。
・キャントリルの梯子=人生を0段(最悪)〜10段(最高)のはしごに見立てて自己評価させる質問。
・しかし1つの指標だけでは、個人や社会が「繁栄している」とはどういうことかの一部しか捉えられません(Seligman, 2018;VanderWeele, 2017)。
▼ 幸福には複数の「種類」がある
幸福は大きく3つの側面に分けられ、それぞれが別物として扱われます。
・ヘドニック(hedonic)=快楽的側面。いわゆる「楽しい・幸せ」という感情面。
・評価的(evaluative)=人生満足度。自分の人生を全体としてどう評価するか。
・ユーダイモニック(eudaimonic)=意味・自律性・成長など、「良く生きる」ことに関わる側面。
これら3つは互いに中程度しか相関せず、ストレスへの反応も異なり、同じ集団の中でも食い違うことがあります(Martela & Sheldon, 2019;Ryan & Deci, 2017)。
→ つまり、2つの国が1つの指標では同じに見えても、実は重要な領域(心理的欲求の充足、人とのつながり、感謝、楽観性、生活のバランスなど)で大きく違う可能性がある、ということです。
▼ WEIRDバイアスの問題
・多次元的な構成要素を無視すると、社会ごとの構造的・文化的な違いが見えなくなる危険があります(Lomas et al., 2024;Tay et al., 2014)。
・一次元のランキングは「WEIRDバイアス」を強めるおそれもあります。
・WEIRD=Western(西洋的), Educated(高学歴), Industrialized(工業化), Rich(裕福), Democratic(民主的)の頭文字。心理学の知見が、こうした一部の社会に偏って作られてきた問題を指す概念(Henrich et al., 2010;Kirmayer & Swartz, 2014)。
・そのため、ヘドニックとユーダイモニックの両方を含む、より文化的に配慮したアプローチが必要だという合意が広がっています(Delle Fave et al., 2016;Krys et al., 2025)。
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■ ③ 「心理社会的資源」という考え方
この研究の核となる概念が「心理社会的資源(psychosocial resources)」です。
▼ 心理社会的資源とは
主観的幸福そのものとは別に、自律性・有能感・関係性・感謝・希望(楽観性)・生活のバランスといった資源が、繁栄の中心的な構成要素として注目されています(Ryan & Deci, 2017;VanderWeele, 2017;Sheldon et al., 2021)。
・これらは、人が逆境に対処し、関係を築き、目標を追い、環境から意味を引き出す力に関わります。
・集団レベルでのこれらの分布は、国の幸福を支える一種の「心理社会的インフラ(psychosocial infrastructure)」として機能すると考えられています(Jansen et al., 2024;Martela & Ryan, 2021)。
▼ 経済発展とは別物
心理社会的資源は、必ずしも経済水準と連動しません。
・感謝や社会的支援は、集団主義的で低所得の社会ほど強いことが示されています(Krys et al., 2025;Taras et al., 2012;Uchida & Kitayama, 2009)。
・一方、自律性の欲求充足(自分にとって意味ある目標を自由に追える感覚)は個人主義的な社会で高いものの、全体の幸福と一律に結びつくわけではありません(Church et al., 2012)。
→ 国によって、文化規範・社会構造・制度・歴史的経緯に応じて、繁栄に至る経路が異なる可能性がある、ということです。
▼ 社会生態学的(socio-ecological)モデル
・幸福を、個人・コミュニティ・文化・構造的条件の相互作用から生まれるものと捉える枠組みです(Oishi, 2014;Uchida & Kitayama, 2009)。
・社会生態学的モデル=幸福を個人の内面だけでなく、その人を取り巻く環境との関係から理解しようとする見方。
・幸福の「組み立て方(architecture)」は国によって大きく異なります(Krys et al., 2025;Luo et al., 2025)。
・例:西洋では快楽的幸福が強く価値づけられ追求されるのに対し、東アジアでは関係的な調和や穏やかな(低覚醒の)ポジティブな状態がより中心的(Uchida & Kitayama, 2009)。
・ユーダイモニックな幸福も、自己観(self-construal=自分を独立した存在と見るか、他者との関係の中で見るか)によって現れ方が変わります(Church et al., 2012;Kitayama & Park, 2017)。
→ まとめると、国レベルの繁栄は経済条件だけでなく、文化的価値観・制度環境・関係的なつながり・心理社会的資源の組み合わせを反映している。関係的に豊かだったり制度的に支えられた環境が、限られた物質的資源を補うことがある、という前提です。
【 研究の中身(方法・結果・考察)】
■ ① 方法:どんなデータを、どう扱ったか
▼ 使った3つのデータ
・Global Flourishing Study(GFS)
・幸福に関する世界最大規模の国際調査。22の国・地域から20万人超が回答。
・標本抽出は2方式の併用。「確率標本(probability sampling)=母集団から無作為に選ぶ、統計的に代表性のある方式」と、「非確率標本(non-probability sampling)=既存パネルからの再接触による方式」。
・調査期間は2022年12月〜2023年10月。回答率は確率標本76.7%、非確率標本60.5%。
・第1波(Wave 1)の参加者は202,898人。実際の分析対象(analytic sample)は182,354人。
・対象国:アルゼンチン、オーストラリア、ブラジル、エジプト、ドイツ、香港、インド、インドネシア、イスラエル、日本、ケニア、メキシコ、ナイジェリア、フィリピン、ポーランド、南アフリカ、スペイン、スウェーデン、タンザニア、トルコ、英国、米国。
・ホフステードの6次元文化スコア
・国ごとの文化傾向を数値化したもの。権力格差(PDI)、個人主義(IDV)、男性性/達成志向(MAS)、不確実性回避(UAI)、長期志向(LTO)、放縦/抑制(IVR)の6つ。
・GDP(1人あたり国内総生産)
・IMF(国際通貨基金)の2022年データ。経済的な文脈づけに使用。
▼ 測定した9つの指標
幸福(ウェルビーイング)が3つ、心理社会的資源が6つ。
・幸福(3指標、すべて1問だけの単一項目)
・人生満足度、人生の有意義感(life worthwhileness)、幸福感。いずれも11段階。
・心理社会的資源(6指標、すべて単一項目)
・自律性、有能感、関係性、感謝、希望(将来への楽観)、生活のバランス。
・単一項目=1つの質問だけで測る方式。深さには限界があるが、心理測定上は妥当という研究があり(Lucas & Donnellan, 2007ほか)、多目的調査では実用的。単一項目のため内的整合性(信頼性の指標)は報告できない。
▼ 分析の手順
・国レベルで集計:各国の回答者の平均値を国の値とする。
・標準化(z得点化):指標ごとに尺度の範囲が違うため、平均0・ばらつき1にそろえて比較可能にする。
・階層的クラスタリング(ウォード法):似た国どうしをまとめる予備分析。いくつのグループに分けるのが適切かを探る。
・k平均法(k-means):グループ分けを精緻化する手法。
・グループ数の決定:WSS(クラスター内平方和=グループ内のばらつき。小さいほど凝集している)の「肘(elbow=減り方が緩やかになる折れ目)」と、シルエット幅(グループ分けの良さの指標)を見て判断。
・PCA(主成分分析):多次元のデータを2次元に圧縮してグループの分離を可視化。
・一元配置分散分析(ANOVA):グループ間で各指標に統計的に意味のある差があるかを検定。
・沖積図(alluvial plot):波の間で国がどのグループへ移動したかを図示。
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■ ② 結果:見えてきた「3つの類型」
▼ 3クラスター解が支持された
・Wave 1ではWSSの「肘」がk=3に明確に現れ、シルエット幅も3グループを支持。
・PCAでは第1主成分(PC1)が62%、第2主成分(PC2)が25%、合計87%の分散を説明。グループはPC1に沿ってきれいに分かれた。
・つまり「3つのグループに分けるのが妥当」と複数の基準が一致して示した。
▼ 頑健性のチェック(leave-one-variable-out)
・9指標を1つずつ抜いて分析を9回繰り返し、グループ分けがどれだけ変わらないかを確認。
・Wave 1では元のグループにとどまった国の割合が27〜91%(平均73.7%)、Wave 2では73〜100%(平均82.3%)。
・→ 特定の1指標に引っぱられた結果ではなく、3グループ構造は概ね安定している、と解釈。
▼ Wave 1の3クラスター
・クラスター1(Strong Resources=強い資源):11か国
・アルゼンチン、ブラジル、エジプト、インドネシア、イスラエル、メキシコ、ナイジェリア、フィリピン、ポーランド、南アフリカ、米国。
・幸福も心理社会的資源も高く、全領域でバランスよく繁栄(幸福感7.33、人生満足度7.30、有意義感7.85など)。
・クラスター2(Moderate/Mixed=中程度・混合):10か国
・オーストラリア、ドイツ、インド、ケニア、スペイン、タンザニア、トルコ、英国、スウェーデン、香港。
・幸福・資源ともやや低め(幸福感6.75、人生満足度6.46など)。有能感と生活バランスがクラスター1より弱め。
・クラスター3(Distinct Low-Resource=独自の低資源):日本のみ
・ほぼ全指標で最も低いスコア(幸福感6.07、人生満足度5.90、関係性5.71、感謝5.69、希望5.79など)。
・著者は、日本が単独でグループを形成したことは「日本の幸福プロファイルが他国と体系的に異なることを示し、東アジアという地域的なまとまりを反映したものではない」と述べています。
▼ Wave 1のANOVA結果
・幸福・有意義感・自律性・有能感・関係性・感謝・希望など、ほとんどの指標でグループ間に有意差あり。
・ただし生活のバランスだけは有意差なし(F(2,19)=2.65, p=.096)。これはWave 2でも同様(有意差なし)。
▼ Wave 2の3クラスター
・3グループ構造はWave 2でも再び支持(PC1が62%、PC2が25%、合計87%)。
・クラスター1(強い資源):10か国。アルゼンチン、オーストラリア、ブラジル、エジプト、インドネシア、イスラエル、メキシコ、フィリピン、ポーランド、米国。
・クラスター2(中程度・混合):11か国。ドイツ、インド、ケニア、ナイジェリア、南アフリカ、スペイン、タンザニア、トルコ、英国、スウェーデン、香港。
・クラスター3(独自の低資源):再び日本のみ(幸福感5.81、人生満足度5.63など、Wave 1よりさらにわずかに低下)。
▼ Wave 1からWave 2への変化
・約86%の国が同じグループにとどまり、類型は概ね安定。
・主な移動は3か国。
・オーストラリア:中程度・混合 → 強い資源(上昇)。
・ナイジェリアと南アフリカ:強い資源 → 中程度・混合(下降)。
・日本は両波とも単独クラスターのまま。
※ 注意点:安定性について、要旨と結果では「約86%」、考察では「約75%」と数字が食い違っています。論文内の表記の不一致と思われるため、引用の際は留意が必要です。
▼ マクロ変数との関係
・GDP:同じグループ内に高所得国と中所得国が混在。クラスター1には米国(約7万6千ドル)からフィリピン(約3,800ドル)、ナイジェリア(約2,100ドル)まで幅広く含まれた。→ 富と幸福が単純には連動しないことを示す。
・文化(ホフステード):個人主義スコアの低い国(フィリピン、アルゼンチンなど)は、GDPが中程度でも関係性や感謝の資源が強い傾向。
・なお日本は、男性性/達成志向95、不確実性回避92、長期志向88と、いずれも非常に高い値。
【日本に関する記載の整理】
■ ① 日本は「たった1国だけのクラスター」だった
・分析では22か国が3つのグループ(クラスター)に分けられました。
・クラスター1「強い資源(Strong Resources)」とクラスター2「中程度・混合(Moderate/Mixed)」には複数の国が入りましたが、クラスター3「独自の低資源(Distinct Low-Resource)」は日本のみで構成されました。
・これはWave 1(第1波)・Wave 2(第2波)の両方で同じで、日本は2波とも単独クラスターのままでした。
▼ 著者の解釈
・日本が単独でグループを形成したことは、「日本の幸福プロファイルが、データ内の他国と体系的に異なる」ことを示すと述べられています。
・重要な点として、これは「東アジアという地域的なまとまり」を反映したものではない、と明記されています。実際、同じ東アジア圏の香港はクラスター2(中程度・混合)に入っており、日本とは別グループです。
・つまり「アジアだから低い」のではなく「日本という個別のケースが特異」という整理になっています。
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■ ② 日本のスコア(9指標の数値)
国レベルの平均値です。指標ごとに尺度が異なる(有能感は4段階、希望は10段階、生活のバランスは別尺度、その他は11段階)ため、指標どうしの数値は直接は比べられません。
▼ Wave 1の日本
・幸福感:6.07
・人生満足度:5.90
・人生の有意義感:6.21
・自律性:6.09
・有能感:2.45
・関係性:5.71
・感謝:5.69
・希望:5.79
・生活のバランス:2.78
→ ほぼ全指標でデータ内の最低水準。
▼ Wave 2の日本
・幸福感:5.81
・人生満足度:5.63
・人生の有意義感:5.98
・自律性:6.14
・有能感:2.35
・関係性:5.76
・感謝:5.69
・希望:5.67
・生活のバランス:2.74
→ こちらも全指標で最低水準。
▼ Wave 1 → Wave 2の動き
・低下:幸福感(-0.26)、人生満足度(-0.27)、有意義感(-0.23)、有能感(-0.10)、希望(-0.12)、生活のバランス(-0.04)。
・微増:自律性(+0.05)、関係性(+0.05)。
・横ばい:感謝(変化なし)。
→ 全体としては、感情面・評価面の幸福がやや下がり、自律性と関係性はわずかに上がった、という小幅な動きです。ただし著者は「波間の変動は初期波の測定上のばらつきを含む」と注意を促しており、これを「実際の悪化」と断定はしていません。
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■ ③ 他のグループとの比較(Wave 1)
各クラスターの平均値で日本を相対化すると、差の大きさが見えます。
・幸福感:強い資源7.33 / 中程度6.75 / 日本6.07
・人生満足度:7.30 / 6.46 / 5.90
・有意義感:7.85 / 7.10 / 6.21
・自律性:8.11 / 7.59 / 6.09
・有能感:3.18 / 2.97 / 2.45
・関係性:8.02 / 7.53 / 5.71
・感謝:8.31 / 7.54 / 5.69
・希望:8.60 / 7.83 / 5.79
▼ 注目点
・関係性・感謝・希望で、日本と他グループの差が特に大きい。中程度グループとの差でも2ポイント前後あり、心理社会的資源(人とのつながり、感謝、将来への楽観)の低さが目立ちます。
・一方、生活のバランスは日本2.78に対し中程度グループも2.78で同じ。実は「生活のバランス」だけはクラスター間に統計的な有意差がなかった指標であり(ANOVAで非有意)、この点では日本は他国と変わりません。
・つまり「日本はすべてで一律に低い」わけではなく、低さが際立つのは主に幸福感・関係性・感謝・希望の領域です。
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■ ④ GDPとのねじれ(この研究の重要な論点)
・日本の1人あたりGDPは約39,900ドル。
・クラスターごとの平均GDP(表1)は、強い資源グループ約18,936ドル、中程度・混合グループ約31,990ドル、日本39,900ドル。
→ 日本は3つのグループの中で最も経済的に豊かいにもかかわらず、幸福・心理社会的資源は最も低い、というねじれた位置にあります。
・これは論文全体の主張、「経済的な豊かさは国の繁栄を保証しない」を象徴する事例として機能しています。著者は、強い心理社会的資源を持つ中所得国(フィリピン、アルゼンチンなど)が高GDP国に匹敵する幸福水準を示した一方で、一部の富裕国は中程度にとどまった、と述べており、日本はその「富裕だが繁栄プロファイルが弱い」典型といえます。
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■ ⑤ 日本の文化的特徴(ホフステード6次元)
表1に示された日本の文化スコアです(各次元は0〜100程度の指標)。
・権力格差(PDI):54
・個人主義(IDV):46
・男性性/達成志向(MAS):95
・不確実性回避(UAI):92
・長期志向(LTO):88
・放縦/抑制(IVR):42
▼ 他グループの平均と比べると
・男性性/達成志向95は突出して高い(強い資源グループ約56、中程度約46)。
・不確実性回避92も非常に高い(約73、約59)。
・長期志向88も大きく高い(約31、約48)。
・放縦/抑制42は低め(約53、約49)= 欲求の充足を抑制する傾向が強い。
・個人主義46は2グループの中間。
→ 達成志向が強く、不確実性を避け、長期志向で、放縦を抑える文化、というプロファイルです。著者はこれらを記述的な「解釈の補助線」として示しており、文化が幸福の低さを「引き起こす」とは主張していません。
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■ ⑥ 解釈上の注意点
ここは投稿の際にも丁寧に扱うべき部分です。
・この研究は記述的・探索的であり、「日本の文化や制度が幸福の低さを生む」という因果関係は一切主張していません。
・著者自身が限界として、回答スタイルの文化差を挙げています。文化によって尺度の使い方(極端な値を選ぶか、中庸を選ぶか)が異なり、報告された数値の差が「本当の幸福の差」を反映するとは限らない、と明記されています。
・日本人は中庸の回答を選びやすい傾向が知られており、「日本が最低」という結果には、この測定上の要因が混ざっている可能性があります。
・本来は、アンカリング・ヴィネット(共通の架空事例で尺度の使い方をそろえる手法)や測定不変性の検証が必要ですが、本研究では実施されていません。
・また、GFSは初期波の段階にあり、絶対水準は他調査(ギャラップ世界調査など)とずれうる、とも注意されています。
→ したがって、「日本人は本当に幸福度が低い」と断定するのは行きすぎです。正確には「GFSの自己報告データ上、日本は他の21か国と異なる特異なプロファイルを、2波にわたり一貫して示した」という記述にとどめるのが適切です。
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■ まとめ
・日本はGFSの22か国の中で、2波とも「単独のクラスター」を形成した。
・これは地域(東アジア)的なまとまりではなく、日本個別の特異性。
・幸福・心理社会的資源のほぼ全指標で最低水準で、特に関係性・感謝・希望の低さが目立つ(生活のバランスだけは他国と差がない)。
・GDPは3グループ中で最も高く、「豊かさと繁栄のねじれ」の典型例になっている。
・ただし因果は主張されておらず、回答スタイルの文化差という測定上の論点が残るため、「日本人は幸福度が低い」と断定する根拠にはならない。