2026.03.13

37意味とウェルビーイング

ウェルビーイングハンドブック_第六章:リソース

毎日読めばウェルビーイングの基礎が分かる、ウェルビーイング・ハンドブック紹介シリーズ、第六章😊

リソース編(何が幸せにつながるか)では、時間、お金、社会的地位、つながり、利他的行動と来て、

今回は、人生における意味😍

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もし可能なら、今あなたの世界に抱いているあらゆる感情を突然剥ぎ取られた自分を想像してみてほしい。そして、好意や嫌悪、希望や不安といったあなたの評価を一切抜きに、その世界が純粋にそれ自体として存在している姿を思い描いてみてほしい……そうすれば、宇宙のどの部分も他の部分より重要ではなくなり、そこに存在するあらゆる事物や一連の出来事の総体は、意味も、個性も、表現も、視点も持たないものとなるだろう。私たちのそれぞれの世界において、価値や興味、あるいは意味を帯びているように見えるものは、すべて、観る者の心による純粋な賜物に過ぎない。

ウィリアム・ジェームズ『宗教的体験の諸相』

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■ 意味と幸福 Steger, M. F. (2018). Meaning and well-being.

▼ この論文が問う問い

「人生に意味を感じることは、幸福にとって本当に重要なのか?」

かつては哲学や神学の領域にあった「人生の意味(meaning in life)」というテーマが、近年の実証研究によって幸福科学の中心的なトピックになりつつある。本論文はその70年分の理論・測定・研究知見を体系的にまとめたレビュー章である。

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▼ 背景:なぜ「意味」が研究されるようになったのか

もともと「意味」は、宗教・政府・哲学など社会制度が担うものだった。しかし20世紀の二度の世界大戦を経て、それら制度への信頼が揺らいだ。「何のために生きるか」の答えを外部に求められなくなった時代に登場したのが、精神科医ヴィクトール・フランクル(Viktor Frankl)である。

フランクルは「意味とは宇宙の外側にあるものではなく、各人の内側から見出すものだ」と主張した(Frankl, 1963)。これにより「意味」は、科学的に測定・研究できる心理変数として位置づけられた。

・ 1970〜90年代:関連論文は年間100本未満

・ 2006年以降:研究が急増

・ 2015年:年間1,900本が発表されるまでに成長

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▼ 「意味」の種類と定義

意味には三つのレベルがある。

・ 宇宙的意味(cosmic meaning):宗教や神の存在など、宇宙全体に意味があるかという問い

・ 状況的意味(situational meaning):トラウマや失業など、特定の出来事をどう意味づけるかという問い

・ 個人的意味(personal meaning):自分の人生全体が意味あるものだと感じているかという感覚

心理学が主に研究するのは、この「個人的意味」である。

さらに意味には二つの側面がある。

・ 意味の源泉(sources of meaning):どこから意味を引き出しているか。研究では「人間関係」や「活動への従事」が最も多い(Steger et al., 2013)。自己中心的・物質的な源泉より、他者志向・利他的な源泉を持つ人の方が、幸福度も意味感も高い(Schnell, 2009)

・ 意味の探求(search for meaning):意味をより積極的に追い求めている度合い。探求中の人はやや不安で不幸せだが、好奇心や開放性も高い(Steger et al., 2008)

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▼ なぜ人間は意味を必要とするのか:主要な理論

研究者たちは、意味が人間にとって不可欠な理由をそれぞれ異なる角度から説明している。

・ フランクル(1963):人間には「意味への意志(will to meaning)」という根本的欲求がある。これが満たされると幸福に、満たされないと苦悩につながる

・ クリンガー(Klinger, 1977):生物としての目標追求の本能が、人間では抽象的な「生きるに値する人生」という高次の目標へと転化される

・ バウマイスター(Baumeister, 1991):意味は四つのニーズが満たされたときに生まれる。それは「目的(purpose)」「自己価値(self-worth)」「価値観(value)」「有能感(efficacy)」である

・ ステガー(Steger, 2009/2012):意味とは情報処理能力の一形態である。自己・他者・世界に関する知識を統合して「意味システム(meaning system)」を構築し、そこから目標や目的意識が生まれる

・ 感情的観点(Heintzelman & King, 2014):人は直感や感情を手がかりとして、自分の人生に意味があるかを判断する。ポジティブな気分のときは人生がより意味深く感じられる(King et al., 2006)

こうした理論を統合すると、意味とは「経験を理解可能にし(coherence:コヒーレンス)、望む未来へと行動を方向づけ(purpose:目的)、自分の人生が重要で価値あるという感覚をもたらす(significance:重要性)もの」と定義できる(Martela & Steger, 2016)。

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▼ 意味の測定ツール

実証研究では、主に二つの尺度が用いられてきた。

・ ライフ・パーパス尺度(Purpose subscale; Ryff, 1989):活力・目標・やりがいなどを測定。健康関連研究で多用される

・ 意味在人生尺度(Meaning in Life Questionnaire; Steger et al., 2006):「人生に意味と目的があると感じるか」を直接問う汎用的な尺度。「意味の存在(presence)」と「意味の探求(search)」の二因子から構成される

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▼ 意味と幸福の関連:主な実証的知見

研究結果は三つのカテゴリに整理できる。

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▼▼ カテゴリ①:主観的・快楽的ウェルビーイング(hedonic well-being)

※「自分の人生は良い」という主観的な評価全般

意味と正の相関(意味が高いほど高い):

・ ポジティブ感情(愛・喜び・活力)(Chamberlain & Zika, 1988; Steger et al., 2006)

・ 好奇心(Kashdan & Steger, 2007)

・ 希望(Mascaro & Rosen, 2005)

・ 高齢者を対象とするメタ分析で「意味とポジティブ感情の関連」は中〜大の効果量(Pinquart, 2002)

・ 幸福感(Debats et al., 1993)

・ 生活満足度(Ryff, 1989; Steger & Kashdan, 2007)

・ 心理的適応力(O'Conner & Vallerand, 1998)

意味と負の相関(意味が高いほど低い):

・ ネガティブ感情(Steger et al., 2006)

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▼▼ カテゴリ②:心理的・充実的ウェルビーイング(eudaimonic well-being)

※ アリストテレス的な「人間としての潜在能力の発揮」という観点

意味と正の相関:

・ 自尊心(Ryff, 1989)

・ 自己価値感(O'Conner & Vallerand, 1998)

・ 自己実現(Phillips et al., 1974)

・ 自律性・良好な対人関係・有能感(自己決定理論の三要素;Church et al., 2014)

・ 内的統制感=「自分の人生は自分でコントロールできる」という感覚(Ryff, 1989)

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▼▼ カテゴリ③:生活の質(quality of life)

※ 健康、精神疾患、パーソナリティなどを含む広義の指標

意味と負の相関(意味が高いほど低い):

・ 抑うつ症状:メタ分析で効果量は-.46(Pinquart, 2002)

・ 不安症状(Steger et al., 2009)

・ ストレス(Flannery & Flannery, 1990)

・ PTSD症状(DeViva et al., 2016)

・ 絶望感(Edwards & Holden, 2001)

・ 薬物・アルコール問題(Nicholson et al., 1994)

・ 自殺念慮(Henry et al., 2014)

意味と正の相関:

・ 効果的なコーピング=ストレスへの対処能力(Debats et al., 1995)

・ 心的外傷後成長(PTG)=苦境を経て心理的・社会的に成長する体験(Steger et al., 2008)

・ 主観的健康感(Battersby & Phillips, 2016)

・ 長寿(Boyle et al., 2009)

パーソナリティとの関連:

・ 外向性・誠実性と正の相関(Pearson & Sheffield, 1974; Steger et al., 2008)

・ 神経症傾向と負の相関(DeViva et al., 2016)

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▼ 残された課題:三つの未解決問題

研究の蓄積は厚いが、まだ解明が進んでいない領域も存在する。

① 意味はどのようなメカニズムで幸福をもたらすのか

意味が幸福につながる経路はまだ十分に解明されていない。有力な仮説は「意味が良好な対人関係を育む」という経路である。意味の高い人は他者から好かれやすく、友人として選ばれやすいという証拠がある(Stillman et al., 2011)。また、意味の高い人は他者の利益を促進しようとする傾向も見られる(Martela et al., in press)。

② 意味はどのようにして健康につながるのか

意味と健康・長寿の関連は確認されているが、生物学的・行動的メカニズムは未解明な部分が多い。喫煙や物質乱用の抑制(行動的経路)や、炎症性サイトカイン・ナチュラルキラー細胞などの免疫指標の改善(生物学的経路)が示唆されているが、縦断研究や実験研究による確認がまだ必要である(Bower et al., 2003; Krause & Hayward, 2012)。

③ 意味は文化を超えて普遍的か

現在の意味研究は欧米文化に偏っている。いくつかの国際的研究では意味と幸福の関連は普遍的に見られるが(Church et al., 2014)、問いの立て方自体が西洋的である可能性は否定できない。イスラエルのアラブ系・ユダヤ系住民を比較した研究では、意味の源泉の優先順位が民族によって異なることが示されており(Bar-Tur et al., 2001)、各文化から「ボトムアップ」で意味の構造を探る研究が求められる。

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▼ 結論

膨大な実証研究の蓄積は、意味が幸福の単なる「付随要素」ではなく、人間のウェルビーイングと繁栄の「礎石(cornerstone)」であることを示している。

今後の重要な問いは「意味は幸福と関連するか」ではない。それはすでに明らかだ。真の問いは、「意味なしに人は本当にウェルビーイングを経験できるのか」である、とステガーは主張する。

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Meaning and Well-Being

By Michael F. Steger, Colorado State University,Fort Collins; USA North-West University、Vanderbijlpark, South Africa

ウェルビーイング研究において、「人生の意味」というテーマが注目を集めつつある。難解な実存主義的概念からウェルビーイングの礎へと、その認知されるまでの道のりは、実証的研究を通じて築かれてきた。本章では、過去70年間にわたる「人生の意味」に関する研究における理論と測定法の発展を概説し、再現性のある研究結果に焦点を当てる。文献において繰り返し確認されている関係性には、人生の意味と幸福、生活満足度、ポジティブな感情、希望、自尊心、自律性、他者との良好な関係、有能感、外向性、勤勉性、健康、長寿との間に正の相関が見られる。また、意味とネガティブな感情、抑うつ、不安、ストレス、絶望感、神経質性、物質使用障害、自殺念慮との間には、負の相関関係が再現されている。意味に関するエビデンスの蓄積は膨大であり、急速に拡大しており、人間のウェルビーイングと繁栄にとって意味がいかに重要であるかを確実に示しているようだ。

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