2026.01.21
東洋における幸福の概念
先日西洋を中心とした幸福の系譜を紹介しましたが、
同じ著者であるMohsen Joshanloo先生の東洋の幸福概念を整理頂いた研究😊
2014年なので10年以上前のものですが。
実際にはここ10年くらいは西洋東洋の考えはだいぶ融合してきていますね。
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Eastern Conceptualizations of Happiness: Fundamental Differences with Western Views
東洋における幸福の概念:西洋との根本的な違い
2014,Journal of Happiness Studies
Mohsen Joshanloo(啓明大学)
https://link.springer.com/article/10.1007/s10902-013-9431-1
本レビューの目的は、西洋と東洋における幸福と最適な機能の概念を比較対照することです。この目的のため、西洋哲学と科学的心理学における幸福と最適な機能の説明を、東洋のいくつかの学派(ヒンドゥー教、仏教、道教、儒教、スーフィズム)における説明と比較します。西洋と東洋における「よい人生」の概念における6つの根本的な相違点を特定し、より広範な心理学理論の文脈で考察します。この理論的分析が、幸福研究者の間で、より文化的な視点に基づいた研究を促進することを期待します。
■既存研究の概要:西洋と東洋の幸福概念の違い
この論文は、幸福(ハピネス)に関する西洋と東洋の考え方の根本的な違いを明らかにするため、既存の研究や思想を体系的にレビューしたものです。以下、研究の前提となる重要な既存研究について説明します。
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■幸福研究への文化的批判
▼現代の幸福研究が抱える問題点
この論文の出発点は、現代の幸福研究に対する批判的な指摘です。複数の研究者(Christopher 1999; Joshanloo 2013; Lu and Gilmour 2006; Uchida and Kitayama 2009)が、現代の幸福・ウェルビーイング研究は「文化フリー」(文化を考慮しない)な立場を取っていると批判しています。
つまり、欧米で開発された幸福の理論や測定尺度を、文化的背景を無視して世界中に適用してしまっているという問題です。
▼西洋心理学の文化的基盤
Coan (1977)やHwang (2009)は、現代の精神医学や心理学は西洋文明の産物であり、西洋の伝統や生活様式を反映していると指摘しています。
Christopher and Hickinbottom (2008)は、西洋の主流心理学が「リベラル個人主義」(個人の自由や権利を重視する考え方)の理念に大きく基づいており、明確な境界を持つ固定的な自己という概念を前提としていると述べています。
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■西洋における幸福の2つの伝統
▼快楽主義(ヘドニズム)とは
快楽主義は、幸福を「快楽」や「喜び」として捉える立場です。哲学的には「快楽や幸福が人生における最高の、あるいは最も本質的な善であり、人々はできるだけ多くの快楽とできるだけ少ない苦痛を追求すべき」という倫理的立場です(Bunnin and Yu 2004)。
この立場は、古代ギリシャのアリスティッポスや功利主義者によって提唱されました。しかし、Tatarkiewicz (1976)やChristopher (1999)が指摘するように、快楽主義が幸福を達成する方法として人気を得たのは最近のことで、主に西洋文化においてです。
▼心理学における快楽主義的アプローチ
現代心理学では、快楽主義的な幸福は「主観的幸福感」(Subjective Well-being)として研究されています。Diener (1984, 2012)らの研究によれば、主観的幸福感は:
・ポジティブ感情がネガティブ感情より多いこと(感情バランス)
・自分が選んだ基準に基づく人生全体への満足感
として測定されます。
多くの研究者(Belliotti 2004; Christopher and Hickinbottom 2008; Haybron 2008; McMahon 2008など)が、現代西洋における幸福の支配的な見方は基本的に快楽主義的であると論じています。
▼徳主義(ユーダイモニズム)とは
一方、徳主義的伝統では、人間は「快楽を追求する」のではなく「自分の潜在能力を実現する」ことによってのみ良い人生を送ることができると考えます(Devettere 2002)。
古代ギリシャのアリストテレスがこの立場の最も影響力のある提唱者で、快楽主義を明確に否定しました。アリストテレスは「多くの人々、最も下品な人々は、善と幸福を快楽として考えているようだ。それゆえ彼らは満足の人生を好む。ここで彼らは完全に奴隷的に見える。なぜなら、彼らが決めた人生は草を食む動物の人生だからだ」と述べています(Aristotle 1985)。
ユーダイモニアは「徳に従った活動の人生」を意味します(Annas 2000)。
▼現代心理学における徳主義的アプローチ
Ryan and Deci (2001)やRyff (1989)らは、徳主義的幸福には以下のような特性が強調されると述べています:
・自尊心
・人生の意味
・楽観主義
・個人的に表現的な活動の享受
・自律性(オートノミー:自分で決定する能力)
ただし、これらの価値観の一部は、西洋の個人主義という支配的な精神と一致しています。