はぴテク相談室:新しいウェルビーイングの指標、「生きていてよかった」感
最近、なんとなく毎日が虚しくて…。仕事もこなしているし、生活に困っているわけでもないんですけど、『自分って幸せなのかな?』ってよく分からなくなるんです。
それは大切な気づきですね。「幸せかどうか分からない」という感覚、実はとても多くの人が感じていることだと思います。ところで、「幸せですか?」って聞かれると答えにくいこと、ありませんか?
ありますあります!『幸せ?』って聞かれても、なんか一言では答えられないというか…。
そうなんですよ。実は研究の世界でも、「幸せですか?」だけでは人の豊かさを測りきれないという議論があって、新しい指標が次々と生まれています。その一つが、京都大学の平山貴一先生たちのグループが注目した『生きていてよかった』という感覚なんです。
「生きていてよかった」…!なんか、「幸せ?」より深いものを感じる言葉ですね。
そうなんです。この研究は、日本の農村に住む高齢者382人を対象にしたもので、「生きていてよかった」という感覚が何と関係しているかを調べました。すると面白いことに、『自然とのつながり』『先祖とのつながり』『未来の世代とのつながり』の3つが、この感覚と統計的に関連していたんです。
先祖とのつながりや未来の世代とのつながりって、具体的にどういうことなんでしょう?
研究では「自分が先祖からつながってきた存在だと感じるか」とか「自分の行動や存在が次の世代に何かを残せると感じるか」という感覚のことです。たとえばお墓参りで先祖を身近に感じたり、子どもや若い世代に何かを伝えたいと思ったりすること、といったイメージです。こういった『縦のつながり』が「生きていてよかった」感と関連していた、ということなんですね。
なるほど…。私、最近そういうことをあまり考えていなかったかもしれません。自然とのつながりというのはどういうことでしょう?
自分が自然の一部だと感じる感覚、たとえば木々や空、季節の移ろいに何か大きなものを感じるような体験のことです。研究では、自然とのつながりを強く感じている人ほど「生きていてよかった」感が高い傾向が見られました。ただ、これはあくまで『関連がある』という結果で、自然に触れれば必ずこの感覚が増すという因果関係を示したものではない点は大事なポイントです。
そうなんですね。でも、なんか日々の忙しさの中で、そういう大きなつながりを忘れていた気がします。「自分だけで生きている」みたいな感覚になっていたかも。
それはすごく大事な気づきだと思います。この研究が示しているのは、「幸せ」って個人の満足感だけじゃなくて、時間的・空間的に自分を超えた何かとつながっている感覚にも根ざしているかもしれない、ということなんです。先人から受け継いで、次の世代へ渡していく、そして大きな自然の中に自分もいる、という感覚ですね。
なんか、虚しいのは自分の世界が狭くなっていたからかもしれないな、って気がしてきました。でもこの研究、高齢者が対象なんですよね?私みたいな現役世代にも当てはまるんでしょうか?
鋭い!実は論文の中でも、高齢者以外での研究はこれからの課題として挙げられています。今回の結果がそのまま若い世代や働き盛りの世代に当てはまるかどうかは、まだわかりません。ただ、「生きていてよかった」という感覚の構造が、文化や年齢を超えてどう共鳴するかを調べる研究が今後進むことへの期待が示されていました。
そうか、これからの研究も楽しみですね。とりあえず私も、先祖や自然、未来の世代とのつながりを少し意識してみようかな、という気になりました!
素晴らしいですね!研究から直接言えることは限られていますが、「幸せかどうか分からない」という問いを、「生きていてよかったと感じる瞬間はあるか?」という視点で捉え直してみるだけでも、見えてくるものが変わってくるかもしれませんよ。
■ 今日のまとめ
- 「幸せ?」だけでは測れないウェルビーイングの新指標として、日本文化に根ざした『生きていてよかった』感が研究されています。
- 日本人高齢者382名を対象とした調査では、先祖・未来世代・自然との『つながりの感覚』が『生きていてよかった』感と統計的に関連していました(因果関係ではなく相関)。
- この知見は現時点では日本の農村高齢者を対象にしたものであり、他の年齢層や文化への一般化には今後の研究が必要です。
■ 出典・注意事項
- Hirayama K, Becker C, Wada T, Ishimoto Y, Fujisawa M, Kimura Y, Nose M, Ohtsuru S, Matsubayashi K, Sakamoto R. Cultural pathways to well-being in aging Japan: Exploring the meaning of 'Good to Have Been Alive' through generativity, nature, and intergenerational connection. International Psychogeriatrics. 2025/12/26. https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S1041610225004090
- 【注意事項】本研究は横断調査(ある時点での調査)であるため、相関関係は示されていますが、因果関係(つながりの感覚が『生きていてよかった』感を高める)を証明するものではありません。
- 【注意事項】対象は日本の農村部に居住する高齢者382名に限定されており、都市部居住者・若年・中年世代・他の文化圏への一般化には慎重さが必要です。
研究自体の紹介はこちら😊
新しいウェルビーイングの指標、「生きていてよかった」感
https://wellbeing-archive.pages.dev/posts/2025-12-26-1766791980/