2025.07.14

モラルサークルの国際比較

日本はあの国に次いで下から2番目

先日のセリグマン先生の話や、紹介した論文にも載っていたモラルサークル(道徳の輪)。

昨年末に5万人の世界調査の結果が報告されていました😊

ーー

■分かった事

国際比較の結果としては、

・寛大なほど、モラルサークルも大きい。(個人レベル)

・一方で、宗教圏では、宗教の教えによって、寛大でなくても、モラルサークルが大きい。(特にイスラム教圏は大きい。)

・国レベルで見ると、寛大さはGDPが高くなるほど、低くなる。

(個人主義度やジニ係数(格差)は寛大さに影響がなかった。)

とのことでした。

まぁ宗教、凄いですね。。

ーー

■日本

そして日本は、最下位のロシアに次いで、下から2番目。

スコアが6.93なので、

自分の国までがモラルサークルの範囲ですね・・・

日本の古来からの教えを考えると、そんなに低い!?とビックリしつつも、今のSNSとかニュースを見ると、妥当な気も。

(さすがに謙虚だから、という感じではないような気も。)

むむむむ。さて、どう高めていくか。

でも、海外の国々のモラルサークルが大きいのは良いことですね😍

ーー

■モラルサークルの測り方

Moral Circle Scale(16段階)の詳細

以下のどの範囲までを道徳的配慮を拡張するか。

みなさんは、どのレベルまでの、幸せを考えることができますか?

1:あなたの直接の家族すべて

2:あなたの拡大家族すべて

3:あなたの最も親しい友人すべて

4:あなたの友人すべて(遠い友人も含む)

5:あなたの知人すべて

6:あなたが今まで会ったことのある人すべて

7:あなたの国の人々すべて

8:あなたの大陸の人々すべて

9:すべての大陸の人々すべて

10:すべての哺乳類

11:すべての両生類、爬虫類、哺乳類、魚類、鳥類

12:パラミシウムやアメーバを含む地球上のすべての動物

13:宇宙人を含む宇宙のすべての動物

14:植物や木を含む宇宙のすべての生き物

15:岩などの無機物を含む宇宙のすべての自然物

16:存在するすべてのもの

→その数字がスコア。

1位のバングラディッシュはほぼ12なので、全ての動物までが範疇。

アメリカはほぼ9なので、人類全てくらいまで。

日本はほぼ7なので、日本国内まで

ーー

■モラルサークルに効いてくる寛大さ

寛大さは、その国の日給中央値をもらえた時に、何%慈善団体に寄付するか。という質問。

TOP3:ドイツは82.80%、ブルガリアは86.44%、バングラディッシュは77.95%

最下位3:日本19.65%、アイルランド:25.89%、デンマーク32.02%。

ーーー

Beyond borders: The moderating role of cultural religiosity in the relationship between moral circle and generosity

**Wang Zheng, Juzhe Xi **

Internatioonal Journal or Psychology,2024/12

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39256926/

DL用↓

https://www.researchgate.net/publication/383945923_Beyond_borders_The_moderating_role_of_cultural_religiosity_in_the_relationship_between_moral_circle_and_generosity

研究では、道徳循環と個人の向社会的行動の間に関連があることが示されています。しかし、この関係がより広い範囲の国々に当てはまるかどうか、また社会文化的文脈の影響を受けるかどうかは依然として不明です。本研究では、57カ国49,540人の参加者を含む国際的なデータセットを用いて、道徳循環が個人の寛大さに与える影響と、文化的宗教性の調整役割を調査しました。結果は、国境を越えた文脈において、道徳循環と寛大さの間に有意な正の相関関係があることを示しています。特に、宗教文化においては、道徳循環と寛大さの関連は弱いことがわかりました。さらに、3つの頑健性チェックによって、これらの調査結果が頑健であることが確認されました。本研究では、多国籍の文脈において道徳循環と寛大さの間に正の相関関係があることを確認しましたが、文化的宗教性の調整役割も強調されました。この調査結果は、今後の研究において、文化的および宗教的枠組みが倫理的行動にどのように影響するかをさらに調査する必要があることを示唆しています。

キーワード: 国境を越えた差異、文化的宗教性、寛大さ、道徳的循環、向社会的。

投稿者によるコメント・補足(4件)
コメント 1

ただし、本研究でのモラルサークルは簡易版で。
ガッチリ、モラルサークル測るならこちらの方が良さそう。
Moral Expansiveness: Examining Variability in the Extension of the Moral World(2017)
https://www.researchgate.net/publication/290157323_Moral_Expansiveness_Examining_Variability_in_the_Extension_of_the_Moral_World

コメント 2

研究の前提となる既存研究の流れ

この研究は複数の学問分野の知見を統合したものです。時系列と論理的な流れに沿って説明します。

1. 道徳的拡張の理論的基盤(1980年代〜)

Peter Singer (1981)『The Expanding Circle』

  • 「道徳的範囲」(moral circle)の概念を提唱
  • 道徳的範囲とは: 個人が道徳的配慮に値すると考える存在の範囲
  • 基本アイデア: 人間の道徳は家族から始まり、時代とともに他人、動物、環境へと拡張される
  • 専門用語解説: 道徳的配慮 = 「その存在に対して善悪の判断を適用し、その福祉を気にかけること」

2. 心理学的実証研究の登場(2010年代)

Crimston et al. (2016)『Journal of Personality and Social Psychology』

  • 道徳的範囲が広い個人は、共感的関心と視点取得のレベルが高く、自己犠牲により傾倒することを発見
  • 実証的発見: 理論的概念だった「道徳的範囲」を心理学的に測定可能にした
  • 向社会的行動との関連: 道徳的範囲と実際の親社会的行動(他者のために行動すること)の関係を初めて実証

Neldner et al. (2018)『PLoS One』

  • 道徳的範囲課題で人間の対象により大きな道徳的配慮を示した子どもは、他の子どもにより多くのステッカーを寄付する傾向があった
  • 重要性: 子どもでも道徳的範囲と寛大さの関係が確認された
  • 発達心理学への貢献: 道徳的範囲の概念が年齢を超えて適用可能であることを示した

3. 測定尺度の確立(2019年)

Waytz et al. (2019)『Nature Communications』

  • Moral Circle Scale(道徳的範囲尺度)を開発
  • 16段階の具体的尺度: 「直接の家族」から「存在するすべてのもの」まで
  • 政治的イデオロギーとの関連: リベラルは保守派より広い道徳的範囲を持つ
  • この研究での活用: 今回の57か国研究で使用された標準化された測定ツール

4. 宗教と道徳行動の研究(2014年〜)

Norenzayan (2014)『Behaviour』

  • 宗教的文化では、寛大さなどの向社会的行動がより宗教的信念と教義によって形成・方向づけられる
  • 宗教の役割: 宗教は道徳的行動の動機を提供するが、その動機は道徳的範囲とは異なる可能性
  • 文化的影響: 個人の行動が文化的・宗教的文脈に強く依存することを示した

Gebauer & Sedikides (2021)『Current Opinion in Psychology』

  • 「文化的宗教性」を定義:特定の地理的地域(国や地域など)内の人々の平均的宗教性
  • 重要な区別: 個人の宗教性 vs 文化レベルの宗教性
  • 測定方法: 「宗教はあなたの日常生活の重要な部分ですか?」への「はい」回答率

5. 文化的宗教性の調整効果研究(2020年代)

Zheng (2024)『Current Psychology』

  • 文化的宗教性が個人の道徳的行動の独特な調整要因であることを示した
  • 文化的宗教性と向社会性の予測要因の間の拮抗的相互作用は一般的な現象のようである
  • 調整効果とは: ある要因(文化的宗教性)が他の2つの要因(道徳的範囲と寛大さ)の関係の強さを変える効果

6. 今回の研究への統合

理論的仮説の形成:

  1. 基本関係: Singer → Crimston → Waytz の流れで、道徳的範囲と寛大さの正の関係が確立
  2. 文化的調整: Norenzayan → Gebauer → Zheng の流れで、宗教的文化が道徳的行動に異なる影響を与えることが判明
  3. 統合仮説: 宗教的文化では道徳的範囲と寛大さの関係が弱くなり、世俗的文化では強くなる

方法論的基盤:

  • 大規模国際データ: Azevedo et al. (2023) ICSMP データセット
  • 文化的宗教性指標: Joshanloo (2019) による166か国のデータ
  • 統制変数: Hofstede の個人主義、世界銀行のGDP・ジニ係数

研究の革新性

この研究は初めて個人レベルの心理的要因(道徳的範囲)と文化レベルの要因(宗教性)の相互作用を57か国という大規模データで検証した点で画期的です。これまでの研究は主に単一国家内や限定的な文化比較に留まっていました。

コメント 3
コメント 4

世界中の生きとし生けるものの幸せを願うには。に関する一研究。
→モラルサークルは幼少期は大きい。小学校くらいから小さくなっていく。
https://www.facebook.com/groups/wellbeinginfo/permalink/1943024803174875/

論文紹介 ありがとう 感謝・親切・向社会性文化と幸福・日本的幸福

← 検索にもどる