はぴテク相談室:共感は少なくとも3世代にわたって受け継がれる
はぴテクさん、こんにちは。最近、自分の子育てについてすごく悩んでいて…。私、子どもの頃に親からあまり気持ちを受け止めてもらえなかった気がするんです。だから私も子どもに対してどう接したらいいか分からなくて、ぎこちなくなってしまうことがあって。こういうのって、もう変えられないんでしょうか…?
相談してくださってありがとうございます。そのお悩み、すごく大切なことに気づいておられると思います。実はバージニア大学のスターン先生たちが25年かけて行った研究で、共感って世代を超えて受け継がれる傾向があるということが分かってきたんです。でも、だからといって「変えられない」ということではないんです。少し詳しくお話ししますね。
世代を超えて受け継がれる…?それって、親から受けた影響がずっと続くってことですか?なんか怖いですね。
怖く感じますよね。でも、もう少し聞いてください。この研究では184人の若者を13歳から30代半ばまで追いかけて、3世代にわたる共感のつながりを調べました。確かに、お母さんから共感的なサポートを受けた10代の子は、友達にも共感的に接する傾向がありました。そしてその子が親になると、自分の子どもにも共感的になりやすく、さらにその子ども(孫の世代)も共感力が高い傾向が見られたんです。
じゃあ、私みたいに共感をあまり受けて育たなかった場合は、子どもにもうまく共感できないってことになるんでしょうか…。
この研究で見られた相関係数は0.2〜0.4くらいの「小〜中程度」のつながりなんです。これはどういうことかというと、親からの影響は確かにありますが、それだけで全てが決まるわけではないということです。他にもたくさんの要因が関わっていて、「親からあまり共感を受けなかったから、子どもへの共感も難しい」と断言できるものではないんですよ。
そうなんですか!少し気が楽になりました。でも、相関係数0.2〜0.4って、具体的にどのくらいの影響なんでしょう?
いい質問です!簡単に言うと、「傾向としてつながりはあるけれど、例外もたくさんある」というイメージです。たとえば身長と体重が関係しているのと似ていて、背が高い人は体重も重い傾向があるけど、必ずそうとは限らないですよね。共感も同じで、親からの影響は一つの要素に過ぎないんです。
なるほど。ところで、研究の中で「青年期の友人関係が訓練の場になる」という話があったと思うんですが、それはどういうことですか?
面白いところに注目されましたね!この研究では、10代の頃に友達に共感的に接した経験が、大人になってからの子育ての質と関連していたんです。研究者たちはこれを「訓練の場」と表現していました。つまり、友人関係の中で共感を練習することが、後の子育てスキルにもつながっている可能性があると示唆しているんです。
ということは、今からでも人との関わりの中で共感を意識して練習していくことに意味があるかもしれないってことですか?
研究が直接そこまでは言っていないので慎重に伝えますね。この研究はあくまで「関連がある」という観察結果であって、「練習すれば必ずこうなる」とは証明していません。ただ、共感的なかかわりと良い結果の間には繰り返しつながりが見られていて、研究者たちも友人関係での経験が子育てに影響する「可能性」を述べています。日々の人間関係の中で相手の気持ちを丁寧に受け止めようとすること自体は、無駄ではないと言えそうです。
「親から受けた共感を恩返しする」という表現も研究の中にありましたが、私のように受けていない場合はどうなんでしょう…。
その表現、気になりますよね。研究では「受けた共感を友人や子どもへ返していく傾向がある」という流れが見られました。でも、相関係数が示すように、これは「傾向」であって「法則」ではありません。また、この研究の対象はアメリカの特定の地域の方々で、日本の文化環境とは異なる部分もあります。ですから、あなたの状況にそのまま当てはまるかどうかは分かりません。大切なのは、あなたが今こうして子どもへの接し方を真剣に考えていること、それ自体がすでに共感的な姿勢の表れだと思いますよ。
そう言っていただけると、少し前向きになれます。世代を超えてポジティブなものも受け継いでいけるかもしれないということですよね。
そうですね。この研究のメッセージの一つは、トラウマや困難が世代を超えることが語られる一方で、共感のようなポジティブな傾向も世代をつないでいく可能性がある、ということです。もちろん「必ずそうなる」ではなく「そういう傾向が観察された」ということですが、それでも希望を感じられる発見ではないでしょうか。あなたが今日ここで話してくださったこと、大事にしてほしいなと思います。
■ 今日のまとめ
- 母親から受けた共感的なサポートは、子ども・孫の世代の共感と関連する傾向が25年間の追跡研究で観察されました。
- ただし関連の強さは小〜中程度(r=0.2〜0.4)であり、共感の発達には他にも多くの要因が関わっています。親の影響だけで全てが決まるわけではありません。
- 青年期の友人関係が将来の子育てスキルの「訓練の場」になる可能性も示唆されており、共感のようなポジティブな傾向が世代をまたいで続いていく可能性が示されています。
■ 出典・注意事項
- 【出典】Jessica A. Stern et al., 'Empathy across three generations: From maternal and peer support in adolescence to adult parenting and child outcomes,' Child Development, 2024. https://srcd.onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1111/cdev.14109
- 【紹介元】Greater Good Magazine, 'The Top 10 Insights from the Science of a Meaningful Life in 2024,' 2024年12月19日. https://greatergood.berkeley.edu/article/item/the_top_10_insights_from_the_science_of_a_meaningful_life_in_2024
- 【注意事項①:相関について】本研究は相関研究であり、「共感的な育て方をすると子どもの共感が高まる」という因果関係を証明したものではありません。
- 【注意事項②:対象集団の限界】対象はアメリカ在住の184人(白人58%、アフリカ系アメリカ人29%等)であり、日本を含む他の文化・地域にそのまま当てはまるとは限りません。
- 【注意事項③:母親中心の研究設計】本研究は主に母親の共感に焦点を当てており、父親や他の養育者の影響については別途研究が必要です。
- 【注意事項④:世代数の限界】研究で確認できたのは3世代までであり、それ以上の世代への影響は現時点では不明です。
研究自体の紹介はこちら😊
共感は少なくとも3世代にわたって受け継がれる
https://wellbeing-archive.pages.dev/posts/2025-01-03-1735942136/