道徳的だ!と自己報告する人は、他者に厳しく自分に甘い。(可能性がある)
数年前のですが、道徳性のダブルスタンダードに関する研究😊
道徳的な人は、幸福度が高いと知られています。
が、実際に道徳的か、を調査するのは難しい。
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今回の研究で分かったのは、
道徳的だよ!と自己申告する人は、
他人の利己的な行動に厳しくなりがち!
そして、自分の行動に対しては、甘くなりがち!
という事でした。
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そしてここに関わってきたのは、
良い人に見られたい(評判管理動機)という欲求。
これが低ければ、道徳的だよ!と言いつつ、実際に道徳的。
でも、良い人に見られたい欲求が高い人は、
道徳的だよ!と言いつつ、
他人の利己的行動には厳しいが、自分には甘い。
という傾向が見られました。
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つまり、自分は道徳的だなぁと思っている人ほど、
他人の利己的な行動を責めすぎていないか、
自分の利己的な行動に甘くないか、
を問い直すことが大事ですね😊
(もちろん、自利利他円満、利己的な行動も適度に行うのは大事です😊)
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逆に言えば、他人の利己的な行動をつい強く責めたくなるときは、 その裏に「良い人に見られたい」気持ちが隠れていないか、 ちょっと振り返ってみるのも良いかもですね😊
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見栄えを良くするために良い行いをする:自己申告による道徳的性格は、評判を求める個人の間で道徳的な二重基準を予測する
Being good to look good: Self-reported moral character predicts moral double standards among reputation-seeking individuals
Mengchen Dong, Tom R. Kupfer, Shuai Yuan, Jan-Willem van Prooijen
British journal of Psychology,2022
https://bpspsychub.onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/bjop.12608
道徳的性格は道徳的な判断や行動につながると広く期待されている。しかし、特に道徳的性格が自己申告によって測定される場合、こうした期待はしばしば裏切られる。我々は、自己申告による道徳的性格は、善良に見られたいという願望を部分的に反映しているため、強い道徳的性格を自己申告する人は、他者に対して道徳的に厳しく、自身の過ちを軽視する、つまり、より大きな道徳的偽善を示すと提唱する。道徳的判断におけるこの自己と他者の不一致は、評判を特に重視する人々の間で顕著になるはずである。大規模な多国間パネルデータ(N = 34,323)、ビネット実験、行動実験(N = 700)など、多様な手法を用いた4つの研究が我々の提唱を支持し、道徳的性格の様々な指標(慈悲と普遍主義の価値観、正義感、道徳的アイデンティティ)が、自身の過ちよりも他者の過ちに対してより厳しい判断を下すことを予測することを示した。さらに、こうした二重基準は、評判管理の動機が強い人々の間で特に顕著に現れた。この研究結果は、評判への懸念が道徳的性格と道徳的判断の関連性をどのように調整するかを明らかにしている。
【背景】
■ 出発点となる「常識」とその裏切り
▼ 道徳的人格は道徳的な判断・行動につながるはず、という前提
アリストテレスの徳倫理(virtue ethics:人格や徳を重視する倫理学の立場)以来、哲学者・社会科学者・教育者は、道徳的人格(moral character)が道徳的判断や実践につながると考えてきました(Aquino & Reed, 2002; Kamtekar, 2004; Walker et al., 1987; Walker & Frimer, 2007)。
道徳的価値観を支持すること、不正義に敏感であること、道徳を自己概念の中心に置くことなどの「道徳的人格の発達」は、市民教育の基礎とされてきました(Althof & Berkowitz, 2006)。
▼ だが「自己報告」での測定には食い違いがある
研究者や実務家は、ある人が良い人格か悪い人格かを推定するのに、主に自己報告(self-report:本人が自分について回答する測定法)を使ってきました(Aquino & Reed, 2002; DeCelles et al., 2012; Lee et al., 2008)。
ところが、自己報告された道徳的人格は、必ずしも立派な道徳的判断・行動を強く予測しません。
・111件の研究を統合したメタ分析では、自己報告された道徳的アイデンティティ(moral identity:道徳が自分らしさの中心にある度合い)が実際の道徳的行動に与える効果は小さいと示されました(Hertz & Krettenauer, 2016)。
・自分を他者より道徳的に優れていると感じる人が、必ずしもより道徳的に行動するわけではありません(Tappin & McKay, 2019)。
・道徳的アイデンティティは「公の場での主張」は予測するが、「私的な誠実さの実践」は予測しないことが示されています(Dong et al., 2019)。
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■ なぜ食い違うのか ― 「評判管理」という鍵
▼ 道徳的人格には2つの動機がある
本論文は、人が強い道徳的人格を報告するのは、部分的には「良く見られたいから」だと提案します。
人格の自己報告には2つの成分があると考えられます(Reed & Aquino, 2003; Trivers, 1971)。
・「本物の(genuine)」成分:思いやり(Reed & Aquino, 2003)や罪悪感の感じやすさ(Cohen et al., 2012)など、純粋に道徳的でありたい動機。
・「評判管理(reputation management)」の成分:道徳的に見られたい動機。
▼ 進化論的な理由
進化論の観点では、人は道徳的評判を保とうとします。良い協力者に見え、社会的排除を避けることが、生存にとって長く重要だったからです(Nowak & Sigmund, 2005; Sperber & Baumard, 2012; Vonasch et al., 2018)。
評判を得て保つ最善の方法の一つが、強い道徳的人格を示し、さらには内面化することです(Heintz et al., 2016; Trivers, 1971)。
道徳的人格は、日常の道徳的ジレンマで素早く・直感的に社会的に望ましい反応を取らせ(Hardy & Van Vugt, 2006; Jordan et al., 2016)、他者に対して道徳的に見せる役割を果たします(Batson et al., 1997, 1999)。
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■ 評判管理動機は「個人差」として捉える
評判管理動機の強さは、状況(公的か私的か:Griskevicius et al., 2010)や個人によって変わります。
本論文では、これを個人差のレベルで捉えます。
評判管理動機が高い人は、自己呈示(self-presentation:他者にどう見せるか)により注意を払い(Blader & Chen, 2012; Flynn et al., 2006)、社会的地位を気にします(Griskevicius et al., 2010)。
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■ 「道徳的ダブルスタンダード」とは何か
▼ 道徳的偽善の正体
「道徳的に見せたいが、可能なら実際に道徳的であるコストは避けたい」という目標(Batson et al., 1999)に従うと、道徳的偽善(moral hypocrisy)は道徳的ダブルスタンダード(moral double standards:自分には甘く他人には厳しい二重基準)として現れます(Lammers, 2012; Polman & Ruttan, 2012; Valdesolo & DeSteno, 2008; Weiss et al., 2018)。
▼ なぜ「他者には厳しく」なるのか
他者の悪事を非難することは、自分の徳を社会に強く示すシグナルになります。
・悪事を道徳的に非難する人は、より信頼できると見なされます(Everett et al., 2016; Jordan et al., 2017; Simpson et al., 2013)。
・人は道徳的に見せるために、違反行為に道徳的嫌悪を表明します(Kupfer & Giner-Sorolla, 2017)。
・悪事に怒りを表明すると、自分の道徳的自己概念が高まります(Rothschild & Keefer, 2017)。
・匿名の場面でさえ、人は評判を確立するヒューリスティック(heuristic:素早い判断の経験則)として、他者を厳しく非難します(Crockett, 2017; Jordan & Rand, 2020)。
▼ なぜ「自分には甘く」なるのか
良い行いは良い評判につながりますが、しばしば時間やお金など自己利益のコストを伴います(Hardy & Van Vugt, 2006; Jordan et al., 2016)。
そのため、評判のために道徳的人格を装う人は、実際に道徳的であるコストを避けるべく、自分の違反は正当化したり軽く見たりしうる、というわけです。
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■ 本研究が立てた予測
以上を踏まえ、本論文は次の三者の交互作用(three-way interaction:3つの要因が組み合わさって効果が変わること)を予測しました。
・道徳的人格 × 評判管理動機 × 道徳的判断の対象(自分か他人か)
具体的には、自己報告された道徳的人格が高い人ほど、他者の違反を自分の違反より厳しく裁き、それは評判管理動機が強い人で特に顕著になる、という予測です。
なお、先行研究は一つの形の道徳的人格だけを扱いがちでした(Hertz & Krettenauer, 2016; Schmitt et al., 2005)。本研究は一般化可能性を高めるため、道徳的人格を3つの研究で別々に操作化(operationalization:抽象概念を測定可能な形にすること)しました。
・研究1:慈愛・普遍主義の価値観(Schwartz, 2012)
・研究2:正義感受性(justice sensitivity:不正義への敏感さ。Schmitt et al., 2005)
・研究3:道徳的アイデンティティ(Aquino & Reed, 2002)
評判管理動機も同様に3通りで測定しています。
・研究1:権力・達成の価値観(Schwartz, 2012)
・研究2:セルフモニタリング(self-monitoring:社会的承認に応じて行動を調整する傾向。Snyder, 1974)
・研究3:地位への関心(Blader & Chen, 2011)
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■ 補足
正義感受性については、本研究は「加害者感受性」(自分が不正の恩恵を受けることへの敏感さ)と「観察者感受性」(他者への不正を見ることへの敏感さ)を用い、自己保護的・利己的な性質を持つ「被害者感受性」は除外しています(Fetchenhauer & Huang, 2004)。
正義感受性は道徳的人格の中核とされ(Kohlberg, 1976)、他者の加害行為を厳しく裁くこと(Yoder & Decety, 2014)や、経済ゲームでの公正な分配(Fetchenhauer & Huang, 2004)と関連します。
【研究内容】
■ 全体の構成
本研究は、道徳的人格と道徳的ダブルスタンダードの関係が、評判管理動機によってどう変わるかを、3つの研究で検証しました。
・研究1:大規模多国籍パネルデータ(N=34,323)
・研究2:ビネット実験(N=198)
・研究3:行動実験(N=301)
測定方法も対象も異なる3つの研究で同じ結論に達することで、収束的証拠(converging evidence:異なる方法でも同じ結果が得られること)を得ようとしています。
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■ 研究1 ― 多国籍代表データでの検証
▼ 方法
2004年の欧州社会調査(ESS)を使用しました。この回には「経済道徳」に関する特別モジュールがあり、4万人超の回答者の「自分の違反行為の頻度」と「同様の違反への評価」が記録されています。
ただし、これらは「自分/他人の違反への道徳的非難」を直接測ったものではないため、
・自己報告の違反頻度 → 自分への道徳基準の代理指標
・対象を特定しない違反への厳しさ → 他者への道徳基準の代理指標
として用いました。
道徳的人格は「慈愛・普遍主義」の価値観、評判管理動機は「権力・達成」の価値観で測定(Schwartz価値調査による)。最終的に全質問に有効回答した34,323名を分析対象としました。
▼ 結果
2層線形混合モデル(two-level linear mixed model:国や個人といった階層構造を考慮した分析)で「違反への厳しさ」を分析したところ、
・道徳的人格は厳しさと正の相関(β=.11)
・評判管理動機は厳しさと負の相関(β=−.04)
・重要なのは、両者の交互作用が有意(β=.02)で、道徳的人格と「他者への厳しさ」の結びつきは、評判管理動機が強い人ほど強かった点です。
次にポアソン一般化線形混合モデル(Poisson GLMM:回数のような偏ったデータに適した分析)で「自分の違反頻度」を分析すると、
・道徳的人格は違反頻度と負の相関(β=−.03)
・評判管理動機は違反頻度と正の相関(β=.03)
・やはり交互作用が有意(β=−.01)で、道徳的人格が高い人ほど自分の違反を少なく報告し、それは評判管理動機が強い人で特に顕著でした。
▼ 考察と注意点
道徳的人格が高い人は他者に厳しく、かつ自分の違反を少なく報告しました。ただし、対面インタビューでの違反頻度は実際の行動だけでなく戦略的な自己呈示を反映した可能性があります(Dong et al., 2019; Shaw et al., 2014)。
つまり「本当に違反していない」のか「違反したが評判のため過少報告した」のかは区別できず、この結果は慎重に解釈すべきとされています。
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■ 研究2 ― ビネット実験での厳密化
▼ 研究1の限界を補う
研究1には、(1)自分と他人の測定が別尺度で直接比較できない、(2)違反の内容が自他で完全には一致しない、という限界がありました。
そこで研究2では、同一の違反について、自分が対象か他人が対象かを操作し、同じ尺度で比較しました。
▼ 方法
オランダの198名(大半が学生)を、「自分が対象」条件(n=102)と「他人が対象」条件(n=96)にランダムに割り当てる被験者間計画(between-subjects design)を採用。
4つの組織内の違反シナリオ(例:機密プロジェクトの情報を友人と共有)について、自分または「同僚」が行ったと想定し、道徳的非難を7点尺度で評価させました。
・道徳的人格:正義感受性(Schmitt et al., 2005)
・評判管理動機:セルフモニタリング(Snyder, 1974)
▼ 結果
2層線形混合モデルで分析したところ、予測した三者交互作用が有意(β=.27)でした。
・評判管理動機が低い人:道徳的人格が高いほど、自分への非難が強まり(B=.40)、他者への非難は変わらなかった(有意でない)
・評判管理動機が高い人:逆に、道徳的人格が高いほど、他者への非難が強まり(B=.26)、自分への非難はむしろ弱まる傾向(負の関連)
▼ 考察
評判管理動機が高い人では、道徳的人格が「他者への厳しさ」と「自分への甘さ」の両方として現れました。研究1では「他者への厳しさ」が中心でしたが、研究2では「自分への甘さ」も加わった点が新しい知見です。