はぴテク相談室:競争環境では、感謝の気持ちが搾取を招く😂
最近、職場の交渉ごとで悩んでいて…。私って割と「ありがとうございます」とか感謝の言葉をよく使うんですけど、なんか損してる気がするんですよね。相手にうまく丸め込まれてるというか。気のせいですかね?
あ、それ気のせいじゃないかもしれないんです。実はハーバードビジネススクールの研究チームが、まさにそのテーマを調べた研究があるんですよ。「競争的なやりとり(交渉など)の場で感謝を表現すると、相手が利己的な行動をとりやすくなる」という結果が出ていて。ちょっとショッキングな内容ですよね。
えっ、感謝を伝えると損するんですか!?それはつらいですね…。どういうことなんでしょう?
仕組みとしてはこうです。感謝を伝えると、相手に「この人は寛大で、多少無理を言っても許してくれそうだ」と思われやすくなるんです。研究では、感謝を表現した相手と交渉した人は、そうでない相手より強引な条件を提示する傾向があったり、嘘をついてしまうケースも増えたりしました。「許してくれそう」という推測が、相手の利己的な行動を引き出してしまうんですね。
じゃあ、交渉のときは感謝の言葉を使わないほうがいいってことですか?なんか悲しいですね…。
研究が示しているのは「競争的な文脈では注意が必要」ということで、感謝そのものが悪いわけではないんです。実際、この研究でも感謝と似たポジティブな感情である「興奮・ワクワク感」を表現した場合は、同じような利己的行動を引き出さなかったんです。感謝という感情が持つ「許しや受容」のニュアンスが特有の影響を与えている、という点が興味深いですよね。
なるほど!感謝とワクワク感では、相手への伝わり方が違うんですね。じゃあ交渉のときは「ありがとう」じゃなくて「それは面白いですね!」みたいな感じのほうがいいのかな?
この研究の結果からはそういう可能性も読み取れますね。ただ一点補足すると、この研究で扱われた「感謝の表現」には2パターンあって、一つは相手の提示額に対してその場で感謝を伝えるもの、もう一つは「私はもともと感謝の気持ちが強い人間です」と自己紹介のように伝えるものでした。どちらの場合も同様の結果が出ています。
自己紹介で「感謝の人です」って言うだけでも影響があるんですね。知らなかった…。ちなみに、日頃から感謝の気持ちが強い人はやっぱり交渉で不利なんですかね?
それは難しい問いですね。この研究は「感謝の気持ちを表現した場合に相手がどう反応するか」を調べたもので、感謝の気持ちが強い人がトータルで損をするかどうかまでは示していません。実際、感謝の心が豊かな人は関係構築力や信頼獲得につながることも多くの研究で示されています。交渉の場面に限った話として参考にするのがよさそうです。
確かに!いつもお世話になっているお客さんとの関係は、感謝を伝えているおかげで良くなってる気もします。場面によって使い分けが大事なんですね。
まさにそうだと思います。長期的な協力関係では感謝の表現が相手の向社会的な行動、つまり「相手のために動こう」という気持ちを引き出すことは、これまでの多くの研究でも示されています。今回の研究が注目しているのはあくまで「競争的・分配的な交渉の場面」という特定の文脈なんですよね。
じゃあ、交渉の席では少し気をつけつつ、普段の関係づくりでは感謝を伝え続けていいということですか?なんかホッとしました!
そうですね!この研究の面白いところは、感謝を全否定しているのではなく、「場の文脈によって感謝の受け取られ方は変わる」という視点を与えてくれているところです。交渉の場では「寛大に見られすぎていないか?」を少し意識するだけでも、違いが出てくるかもしれません。感謝の表現の仕方やタイミングを工夫するヒントにしてみてください。
■ 今日のまとめ
- 競争的な交渉の場では、感謝を表現すると「許してくれそう」と相手に受け取られ、利己的な要求や嘘を引き出しやすくなることが実験で示された
- 同じポジティブ感情でも「興奮・ワクワク感」の表現では同様の効果は見られず、感謝特有の『許容・受容』のニュアンスが影響していると考えられる
- この影響は競争・分配的な交渉という特定の文脈で見られたものであり、長期的な協力関係における感謝の効果とは区別して考えることが大切
■ 出典・注意事項
- 出典:Jeremy Yip, Kelly Kiyeon Lee, Cindy Chan, Alison Wood Brooks (2018)『Thanks for Nothing: Expressing Gratitude Invites Exploitation by Competitors』HBS Working Paper Series. https://www.hbs.edu/faculty/Pages/item.aspx?num=54133
- 注意事項①:本研究は実験室的な交渉場面を対象としており、実際のビジネス交渉や長期的な人間関係にそのまま当てはめられるかは限界があります
- 注意事項②:研究で観察されたのは『感謝の表現→相手の利己的行動』の関連性であり、感謝を表現すること自体が必ず損につながるという因果関係を断定するものではありません
- 注意事項③:感謝の気持ちを持つこと自体の効果(関係構築・信頼・パフォーマンスへの影響)は本研究の対象外であり、別途検討が必要です
研究自体の紹介はこちら😊
競争環境では、感謝の気持ちが搾取を招く😂
https://wellbeing-archive.pages.dev/posts/2026-01-12-1768253433/