はぴテク相談室:人は優しい人を助けたいと思う。
最近、職場でいつも頑張っているのに、誰も助けてくれないな…と感じています。困っていても周りが動いてくれないんです。なぜなんでしょう?
それはつらいですね。実は「人がどんな人を助けたくなるか」について、進化心理学の研究があるんです。名古屋工業大学の小田亮先生らの2024年の研究なんですが、面白い結果が出ていて、少しヒントになるかもしれません。
進化心理学…なんか難しそうですが、どんな結果だったんですか?
実験では、架空のシナリオで「困っている人」を描いて、参加者がどれくらい助けたいと思うかを測りました。すると、助けたいと思われやすいのは大きく2パターンあることが分かったんです。①周りのために動ける「優しい人・利他的な人」が困っている場合と、②自分ではどうにもコントロールできない理由で困っている場合、です。
なるほど。その2つは、どっちの方が影響が大きいんですか?
研究では、①の「その人が普段から優しいか・利他的かどうか」という性格面の方が、より強く助けたい気持ちに影響していたようです。ただ、②の「自分ではどうにもならない理由で困っているか」も独立して影響していて、2つは別々に作用していたというのが興味深いポイントです。
「独立して作用する」というのはどういう意味ですか?
たとえば、「優しい人が、自分ではどうにもならない理由で困っている」と、2つの条件が重なっても、それぞれの効果がただ足し算されるイメージです。どちらかが揃えばある程度助けたくなるし、両方揃っても「掛け算式に爆発的に助けたくなる」というわけではなかった、ということですね。
じゃあ、なぜ「優しい人」だと助けたくなるんでしょう?
研究の考察によると、人は無意識のうちに「この人を助けたら、将来自分が困ったときに返ってくるかな?」という互恵性の可能性を見ているらしいんです。普段から人のために動ける人は「いざとなったら恩返しをしてくれそう」という手がかりになる。一方、コントロールできない理由で困っている人は「怠けているわけではない=能力的に返せる可能性がある」という手がかりになる。この2つを別々に処理しているのではないか、という考え方です。
なるほど…。では私は職場でどうすればいいんでしょう? 普段から人を助けるようにすれば変わりますか?
この研究はあくまで架空のシナリオを使った実験で、「相関」を見たものです。なので「こうすれば必ず助けてもらえる」とは言い切れません。ただ、研究の結果として「普段から利他的に動いている人は、助けを受けやすい傾向があった」ということは言えます。日本の昔話の「善いことをした人が報われる」という世界観に近い結果、とも言えますね。
確かに、そう言われると思い当たることも…。でも、普段から人を助けていても助けてもらえない人もいますよね?
鋭いですね。この研究はあくまで見知らぬ人同士の関係を想定した実験で、職場の人間関係など実際の環境での結果ではありません。また、「向社会的かどうか」が周りにきちんと伝わっているかどうかも大事な点です。自分の利他的な行動が周囲に見えていない場合は、研究の前提条件自体が成り立たないということも考えられます。
そうか、自分の行動が見えていないと意味がないんですね。研究から言える一番大事なポイントをまとめてもらえますか?
はい、まとめると3つです。①普段から人のために動く「利他的な姿勢」が、周囲の助けを引き出しやすい傾向と関連していた。②自分ではコントロールできない困難も、助けてもらいやすさに独立して関係していた。③ただしこれは実験的なシナリオ研究であり、現実の人間関係がそのまま同じとは限らない点は念頭に置いておくといいですよ。
■ 今日のまとめ
- 普段から利他的・向社会的に行動している人は、困ったときに助けてもらいやすい傾向が研究で示されています
- 自分ではコントロールできない理由で困っている場合も、周囲の共感・援助意欲を高める要因として独立して働くことが分かりました
- この2つの要因(性格面と状況面)は別々に助けたい気持ちに影響しており、どちらか一方でも助けを得やすくなる可能性があります
■ 出典・注意事項
- 出典:Oda, R. et al. (2024). Deciding Who Is Worthy of Help: Effect of the Probability of Reciprocity on Individuals' Willingness to Help Others. Evolutionary Psychology. https://journals.sagepub.com/doi/10.1177/14747049241254725
- 注意①:本研究は架空のシナリオ(ビネット)を用いた実験であり、現実の職場や日常の人間関係を直接測定したものではありません
- 注意②:研究で示されているのはあくまで「相関・傾向」であり、「こうすれば必ず助けてもらえる」という因果関係を示したものではありません
- 注意③:参加者は日本人を対象としており、他の文化・社会への一般化には限界があります
研究自体の紹介はこちら😊
人は優しい人を助けたいと思う。
https://wellbeing-archive.pages.dev/posts/2024-07-16-1721088691/